映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「Arc アーク」感想

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Arc アーク、観た。人類初の「不老不死」の女性の人生を描く。これを30分の短編にまとめたら傑作だったのにな〜という感覚は最後まで拭えなかった。フランスや北欧あたりの近未来SFを志向しつつ、邦画らしさも漂わせる。正直、チグハグな部分も目立つのだけど、逆に「こんなSF見たことない」とも思う。

画で見せる力が十分すぎるほどあるからこそ、哲学的なセリフを並べた会話パートが物足りなく感じる。後半に進むにつれてその傾向は強くなり、物語のトーンが内省的になると映画のテンション自体落ちてしまうのは残念だ。終わってみると、寺島しのぶのパート必要だったっけ?

芳根京子はあらゆるライフステージを演じる大車輪の活躍。無邪気な子どもから塞ぎ込んだ女性、成熟したアーティスト…。とある場面(海辺の小屋です)で見せる「母」の表情がすばらしい。あと、時折挟まれるインタビュー風の無名俳優の使い方がうまい。あそこだけドキュメンタリータッチで面白かった。

冒頭のクラブの場面はそのまんまルカ・グァダニーノ版「サスペリア 」のイメージだし、そのあとの近未来SF(香川県庁がカッコよく見える)は「ブレードランナー2049」や「私が、生きる肌」を思わせる質感。その小さなスケール感をチープと見る人もいるだろうけど、独特の禍々しさがあって好きでした。

中盤以降は賛否分かれるでしょうね。前半のテイストの継続を期待すると特に。というか、これをやりたいんだったら、前半そこまで厚みを持たせる必要あった?と。ばらまいた伏線の回収にもたついたり、会話で話の流れが停滞したり、イマイチ切れ味がない。「蜜蜂と遠雷」でも思ったが話運びが重い。

実存に迫る壮大なテーマ設定と、物語が展開するステージの小ささのギャップを活かすのであれば、個人的にはもっとタイトな尺でシュアにまとめてくれた方がスッキリ見られたのではと。終盤は「いなくなれ、群青」を思い出す。正直、描かれることに興味は持てなかったが、映像への興味で最後まで見れた。