映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アルジェの戦い」感想

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アルジェの戦い、観た。フランス統治下のアルジェリアが独立を勝ち取るまでを描く。5年の歳月をかけ、8万人のエキストラを動員した映像の迫力と生々しさに衝撃を受けた。無差別テロの酷さ、民衆が社会を動かすエネルギー、フランスの恥部、ぜんぶ描く。これはオールタイムベストに入れたい一本…!!

物語の終盤のワンシーンを冒頭にもちこむ時系列の入れ替えや、ほぼオールロケでの屋外撮影、カメラの手ブレから生まれる臨場感など、わりと現代的な演出が光っていたと思う。権力に押し潰されそうな抵抗勢力と、その内側の怒りや焦燥感は、アメリカン・ニュー・シネマ的な手触りもある。反戦の精神も。

無差別テロのシーンは本当に声出てしまった。演者のすぐ脇でホンモノの爆発を起こしてるし、そこに人が集まる様子もニュース映像を見ているようだ。この映画は独立派のゲリラ戦を必ずしも肯定的に描いておらず、無垢の市民や赤ちゃんすらこの血に塗れた争いに巻き込まれた事実を隠さない。

さっきアメリカン・ニュー・シネマと書いたけど、どっちかというとネオレアリズモの方が近いかもしれない。「無防備都市」とか、そこら辺ですよね。アリのギラギラした佇まいが良かったなあ。暴発しそうなヒヤヒヤ感がある。そして、そのエネルギーこそ民衆に受け継がれる闘争心の源なのだと。

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あと冷徹なフランス軍の司令官・マチュー中佐もよかった。コイツにはコイツなりのロジックがあり、忠実に任務を果たしているのだとわかる描き方。特に「拷問」の有無を記者に訊かれた中佐が、「向こうのテロはどうなんだ」と煙に巻く場面は、この残酷な戦いのすべてを表している気がする。

カスバの入り組んだ地形と街並みも、十分に魅力的だ。ヨーロッパ人街の整然としたパリのような風景とは大違いである。テロが効くのは最初だけだとか、革命を続けるのは革命を始めるより難しいといった言葉には、現代に通ずる重みがある。しかし、この映画に込められたパワーを信じたくもなる。