映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「嵐電」感想

f:id:StarSpangledMan:20210722010859j:image

嵐電、観た。生活の場としての京都という切り口は新鮮だ。地層のように積み重なった日常の匂いと人びとの記憶。ゆったりと落ち着いた雰囲気のファンタジーながら、ギョッとするカットのつなぎを多用しており、油断ならない。ただ、全体的な空気の良さに引き込まれつつ、自分には馴染まない映画だった。

実質主演の大西礼芳は、この人でなければ「嵐電」は「嵐電」たりえなかっただろうと確信できるぐらい、その独特な佇まいで作品を引っ張っている。いい意味で何を考えてるのか読めない目をしてますね。駅の前で待ち伏せしてた金井浩人に気持ちをぶつけるところとか。先の見えないスリルがあった。

すっごく内向きで冷たい人にも見えるし、逆に熱いハートを秘めた「恋をする人」にも見える。過去と現在と未来が、フォトアルバムみたいに街の至るところに散らばっているこの映画において、彼女の「読めなさ」はスリリングな緊張感をもたらしている。

一方、金井浩人は「何故この人に惹かれるのか」を納得できるほどの存在感を見出せなかった。「きらきら眼鏡」でも主演していたが、正直、あまりインパクトのない役者である。鎌倉から取材に訪れた井浦新はある種「旅人」と言っていい役柄だが、地元で働く大西礼芳の方がよっぽど異質感を放っている。

嵐電」の井浦新の演技は少々主張控えめな気がしていて。あくまで一歩引いて物語をまわす側の立場なので、それが正解なのかもしれないけど、個人的には物足りなさを感じる。もしかしたら、俺が彼の演技からなにかを感じられるほど丁寧に観ていなかったからなのかもしれないけど。

引き出しの少なさがバレるけど、井浦新が畳の間で妻と電話してると思ったら、真横に布団に包まっている彼女が現れる中盤のふしぎな演出は、アピチャッポンの「ブンミおじさんの森」を思い出した。しかし、終わってみると全然そういう話でもなかったようだ。結局この映画なんなのかを掴みきれていない。