映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サムジンカンパニー1995」感想

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サムジンカンパニー1995、観た。90年代の大手電気メーカーを舞台に、一般職の女たちが内部告発に挑む韓国版「エリン・ブロコビッチ」。ボディコンに肩パッド、かき上げた前髪でクールに着飾る!テクノ音楽もオシャレ。偏見に抗い、泥くさく突き進む三人の戦いコミカルで楽しいが、後半モタついた印象。

この頃の韓国の経済状況も、対するニッポンのカルチャーも正直よくわからないのだが、本邦のバブリーな空気が時差で流れ込んできたようなものだろうか?冒頭の「サムジンカンパニー英語部」のくだりは可笑しくてたまらなかった。良くも悪くも今ほど殺伐としてなくて、ガサツでおおらかなイメージ。

溌剌としていて世話焼きなジャヨン、クールで勝ち気なユナ、大人しいけど頭のキレるボラム。三者三様のキャラの掛け合いが楽しい。この映画の見どころは、なによりも彼女たちが居酒屋でクダ撒いてるところだろう。愚痴って泣いて明日の話をする。そこで会社の運命を左右する会話もされる。ギャップよ!

基本コメディ調ながら、田舎町の工場でジャヨンが汚染水の流出を見つけてしまう冒頭は、ちょっぴり社会派映画の趣きがある。この国は「倒されるべき巨悪」のエピソードに事欠かない。財閥や検察との癒着である(日本は明るみに出ないか、ヒヨってネタにしてないだけな気がするが…)。

正直、不正の真相が固まってからの展開は足取りがおぼつかない。ツイストがかかり過ぎていて、前半の勢いを削いでしまっている。どうせなら二つ三つ展開を減らして、テンションで最後まで押し切ってもよかったのでは。「半沢直樹」的なスカッと展開も少々豪快過ぎると思った。楽しいからいいけど。

巨悪に立ち向かうには団結だ、というテーマはとてもいいと思う。ただ、ここで描かれるのは90年代の女性、もっと言うと、高卒一般職社員の置かれる境遇の問題でもある。なかなか男女の不均衡が解消しない20年代に生きる我々の目に、この物語は無邪気に映るのではないか。

現在進行形の映画を描いた作品を観て、すっきり気持ちよくなっておうちに帰れるようではダメだと思う。これは個人的な映画に対する「思想」と言ってもいいけれど、それでは現実にフィードバックできない。ジャヨン、ニナ、ボラムがいまどんな人生を送っているか?のイメージまで想像できなかった。

つらつらと文句を並べてしまったが、クライマックスの処理で足踏みするまで、これは今年のベストテンに入るかもな〜と思ってたぐらいには好きな映画。「終わりよければすべてよし」派なので、着地でつまずいたのが痛いけど。エンドロールはオシャレで茶目っ気もあって好きでした。長久作品みたいだね。