映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サイダーのように言葉が沸き上がる」感想

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サイダーのように言葉が湧き上がる、観た。あんなにキュートな前歯してるのにコンプレックスに思ってしまうスマイルちゃんが愛おしくて堪らなかったのだが、そんな彼女への恋心がサイダーのように湧き上がるチェリーくんもまた可愛らしい。爽やかで喉越しのいい作品。ラストカットでマジ泣きしました。

声優初挑戦の市川染五郎、やはり職業声優とはちがう表現にはなるのだけど、却ってその青々しさがチェリーくんの奥手っぷりを強調する。杉咲花のすばらしさは言うまでもない。元々可愛い声してるので、それだけでキャラの魅力マシマシなのだけど、ふとした瞬間の揺らぎや迷いの出し方がとても上手い。

舞台となる田舎のショッピングモール、屋上のチェリーくんの隠れ家、バイト先のデイケアサービス。それから、スマイルちゃんと歩く田んぼの畦道。どれもどこか懐かしいけれど、パステル調の色彩が鮮やかでたのしい。モクモクの雲もすてき。恋をするといつもの景色も綺麗に見える。

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まるでふたりの出会いを祝福するようだ。しかし、キーとなる俳句はあくまで物語を装飾するための一要素にとどまるように見える。とめどなくことば溢れてしまう、その衝動の表現をもっとアニメーションの力で見せてほしかった。しかし、時計、レコード、扇風機…といったモチーフの使い方はいい。

そして何より物語の着地ですよね。ここはもう文句なしにすばらしかった。ラストカットでぐっと来てしまった。なんて爽やかなんでしょう。終始音楽が流れていて、環境音のみで構成される場面が殆どなかったのは気になったけど。中盤少し眠くなったが、「夏休み映画」らしい後味で大いに気に入った。