映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「殺人狂時代(1967年)」感想

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殺人狂時代、観た。ナチスの残党とマッドサイエンティストが殺人狂を世に放つ。彼らに狙われたのは水虫に悩む中年・桔梗だったが…。「ゴージャスな殺人」とか「殺人芸術のクライマックス」とかいう奇抜なワードでワクワク。あちこちに流転する物語をつなぐ編集がキマってる。予測不能な大傑作!

仲代達矢演じる桔梗はビン底メガネを掛けたボンヤリした男。ねっとりした喋りが気持ち悪いが、殺し屋に狙われてもなぜか機転が効いて命拾いする。対するマッドサイエンティストの溝呂木博士役は「仮面ライダー」の死神博士でおなじみの天本英世。映画の半分は彼の魅了で成り立ってると言っていい。

前半は特に物語が目まぐるしく展開し、場面の移り変わりが激しいのだけれど、その繋ぎにかなり遊びがあって面白い。ラブホでガシガシ揺れるベッドと湯船から溢れ出る水→拷問されるナチスの残党…とかね。こっちが身構えるより半歩先にびっくりする展開を置く。終始このリズムなので飽きない。

質感としては昔の「007」なんでしょうね。ボンクラな主人公に妖艶なヒロイン…というスパイ活劇の型に、ゆるーい笑いが加わり、桔梗の隣にすっとぼけたサイドキックを置くことで、少年向けのヒーローモノっぽい雰囲気も出てくる。殺し屋を追い回す場面にオー・ソレ・ミオを流すセンス!サイコーだ。

殺し屋のキャラも多様で、おそらく「ジョン・ウィック」のトボけた要素を最大限に増幅させるとこうなるだろう。個人的には終盤のハード・ボイルドな展開がお気に入り。これが加わることでグッと作品の奥行きが広がる。ノンジャンルにあちこち飛び回る楽しさと驚きは鈴木清順東京流れ者」を連想した。