映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「人魚伝説」感想

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人魚伝説、観た。ウワサに聞いていたがすさまじい映画だ。夫殺しの濡れ衣を着せられた海女が復讐の鬼と化す。もはや人間とは思えない鬼の形相で槍をふり回し、真っ白な服は血に染まっていく。もはや誰でもいいと言わんばかりに血塗れで大殺戮をくり広げるラストは衝撃。でも、それもまた儚げで美しい。

ああやって夫が船で命綱を握り、妻が海に潜ってアワビをとる漁を夫婦海女って言うらしいですね。主人公・みぎわが最初の殺人に手を染める場面は酷かった。歯止めが効かなくなってグチャグチャにやってしまう衝動。素っ裸で返り血を浴びる絵面は、白い肌と鮮血の赤のコントラストが美しい。

プールに社長を沈める場面は、水面に出るとセミの鳴き声が聞こえて、また中に入ると無音になって…の行き来が面白い。みぎわの夫の暗殺には、原発推進のアレコレが関わっていて、邦画にしては珍しく?明確に反原発のテーマを扱っているわけだが、福島の事故を踏まえると、映画の重みがグッと増す。

クライマックスは引き込まれてしまいますね。当然、死んで当然の人間だ!みたいなテンションでは観られない。みぎわが地上に連れ戻されるきっかけもまた切なく、彼女には天のお告げのように響いたであろうと思う。「キャリー」さながらの大出血パーティーの舞台が「真っ暗な歩道橋」なのが素晴らしい。

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クライマックスの長回しは大好き。あまり海女さんっぽくないと思っていた白都真理の色白ですらっとしたスタイルがここでは大いに映える。自我を失って原発ムラおじさんたちを殺しまくるみぎわは壮絶としか言いようがない。周りを見渡しても海の暗闇、どこまでも続く歩道橋を血塗れで歩く姿はトラウマ。

そういえば中盤のはじめてみぎわが人を殺めてしまう宿の場面、殺し屋のおっさんのふんどしが白から赤に染まっていくんだが、明らかに履き替えただろ!って突っ込みたくなるキレイな染まり具合でしたね。畳の部屋の殺人って、なぜあんなにも生々しくグロテスクなのだろうか。