映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「フリー・ガイ」感想

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フリー・ガイ、観た。自我に目覚めてしまったゲームのモブキャラの話。「なんの特徴もない人間が主人公になる」テーマはよくあるし、結論も新しくはないのだけれど、あえて類似作のオマージュを散りばめ、それらを相対化することで、一歩先の世界を見せてくれる。なかなかロマンチックな話だと思う。

中盤のSF的な盛り上がりに興奮。しかし、だいたいの着地点が見えてからの道のりが長かった印象。オチが見えてくるとだんだん物語に興味がなくなってしまうのは悪いクセかもしれない。ただ、ラストカットの選択もわりとひねりが効いていて面白い。そっちで落とすんだ!と思った。

本作の最大の皮肉はディズニーに吸収された20世紀フォックスの企画だということだろう。明らかにディズニー的な拝金主義を皮肉っている。一方、ガイの目線で見たときの話運びはディズニー映画の文法に近い。小ネタの使い方も含めて、どっちやねんと思わなくもないが、多層的な映画であることはたしか。

ロマンチックなシチュエーションの最大瞬間風速が強い。特にミリーが心の底から湧き上がる感情の処理に困ってアタフタしてる場面、ジョディ・カマーの演技も含めてよかった。ガイを演じるライアン・レイノルズは、絶妙にニュートラルで心が読めない。善性と裏返しの虚無感、ウソっぽさがうまいと思う。

フリー・ガイはわりと音響のいい映画だったと思う。もしかしたらひさびさにハリウッドの大作を観たから?かもしれないけど。低音が重く響いてズシズシ迫ってきた。映像の賑やかさに反して、案外、頭で面白さを感じる映画かもしれない。だからこそロマンチックな瞬間がその壁を突き抜けてくるのだが。