映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「孤狼の血 LEVEL2」感想

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孤狼の血 LEVEL2、面白かった。沈没する船を修復しながら進むかのように、秩序を維持するために東奔西走する日岡。保身に走る人間が大半の中、ひとり大暴れする上林!誰か早くコイツを止めろ!とスクリーンの前でもどかしかった。上林=鈴木亮平が良かっただけに、彼が後景化する終盤は物足りない。

白石和彌監督は男性を色っぽく撮るのがバツグンにうまい。見方によってはもはやギャグに近い、デフォルメ化された「ヤクザ」像がこれだけセクシーに映えるとは。定年間近の刑事を演じる中村梅雀ですら(?)独特の存在感がある。しかしそもそも物語の中で周縁化されているとはいえ、女性に魅力がない。

殺されたヤクザの頭領の妻(かたせ梨乃)や、堕ちていく弟(村上虹郎)を心配する真緒(西野七瀬)は、どうにもその重要性のわりに関心を払われていないというか、どこまでも定型的な印象を受けた。ここらへんは「ヤクザと家族」の方がまだ良かった、キャラに血が通っていたと思う。

鈴木亮平がすばらしい。ただ立っているだけで「そこに居てはいけない」異形の存在として現れてしまう。コイツがいる限り、誰が死ぬか分からないというスリルがあった。村上虹郎の子犬感もいい。あの声変わり途中みたいな声のザコキャラ感!メジャー映画ではめずらしく在日コリアン差別も描かれている。

しかし、俺はもう少しハードボイルドな作品を期待していたので、時々入るエモーショナルに振り切った演出には距離を感じてしまった。「ひとよ」のときも思ったけど、白石監督の情緒的なストーリーテリングは自分には少々鈍重らしい。ヤクザ映画を目指すならもっと即物的でいいと思いますけどね。

あと殴り合いや銃撃戦、カーチェイスはあまり見応えがない。特に松坂桃李の不死身っぷり。上林が追い詰めた相手をいたぶる場面の暴力描写に具体的な「痛み」のイメージがあるだけに、いざ本格的に殺し合いとなると軽く見えてしまう。いやらしさがあまり無いんですよねえ。