「オールド」感想

オールド、観た。異常なスピードで時間が進んでいくビーチで起こる事件を描く。スリラーの醍醐味を存分に楽しんだが、どうしてもコロナ禍と重ねてしまうところがあった。無為に時間が過ぎていく中で、その手からこぼれ落ちていくもの。しかし、それでも…と、夕日の浜辺を見て思わずにいられない。

設定にかなり出オチ感があるし、絵面もかなり地味なんだけど、それでも最後まで飽きずに観られるのは、丁寧にネタを散りばめた脚本とシャマラン監督の演出のおかげでしょう。パンでカメラを左右に振って時間の流れを見せたり、長回しでビーチを移動したり、ドローン風の映像があったり、手数が多い！

とある家族の死に様がわりと酷いんだけど、「そうはならないだろ！」って思ったし、ビーチの真相も個人的には「いくらなんでもムリでしょ」と突っ込んでしまったけど、それはサービス精神の結果でもある。あと劇伴の使い方がとてもいい。音楽によって映像の強度が増している面がかなり大きいと思った。

観ている途中に「これ無音で観たら地味だしつまんねーだろうな」と下らないことを考えるぐらいには、音楽の力が強い。保険数理士と博物館の研究員という未来／過去の対比は、非常に寓意的だけれども、物語の面白さには寄与していない。むしろちょっとわざとらしく、浮いてしまっていたようにも思う。

だからこの設定ならスリラーとして撮るよりも、ガチガチのSFにしてほしかった。シャマランが取るはずないので、あくまで個人の好みの話ですけども。