映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「シャン・チー テン・リングスの伝説」感想

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シャン・チー テン・リングスの伝説、観た。アクションの面白さはMCU屈指だろう。しかし、わりと思い切って世界観を広げてきたなと。悪く言えばだいぶリアリティラインが下がった。貴種流離譚として描くにしてもお話の組み立てがまどろっこしく、物語が格闘のテンションを超えなかった。うーん。

シャン・チーは、サンフランシスコに暮らすホテルマンとしての顔と、テン・リングスのリーダーの息子という二つのアイデンティティの間で揺れ動いている。要するに彼の物語はアメリカにおける移民の葛藤そのものである。故郷でどれだけすごくても、異国に来れば「One of them」ですからね。

マイティ・ソー バトル・ロイヤル」や「ブラック・パンサー」ではポリティカルかつ寓意的に扱われた移民社会の姿が、ここではよりパーソナルな視点で描かれる。シャン・チーにとってはそれがある種の居心地の良さだったのかもしれないが、父の企みによって嫌でも戦いの世界に身を投じることになる。

前半のカンフーアクションのギミックの豊富さはすばらしく、MCUでは観たことのない迫力だった。「ウィンター・ソルジャー」とも違う面白さ。しかし、話のスケールが大きくなり、ファンタジー要素が強くなるにつれ、映像はどんどん大味になっていく。キレが失われていくのが残念だった。