映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「スイング・ステート」感想

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スイング・ステート、観た。さびれた田舎の町長選にワシントンの選挙参謀が乗り込み、民主党vs共和党の代理戦争へと発展していく。テーマをとあるキャラに語らせてしまうので品がいいとは思わなかったが、十分に楽しんだ。参院広島に於ける菅vs岸田の金にまみれた選挙戦も映画にしたらどうでしょうか。

アメリカの選挙の金のかかりっぷりは日本の比ではないらしく、連邦最高裁が「スーパーPAC」による政治資金供給を認めてしまった(この判決には批判も根強い)がために、大企業や金持ちがほぼ無制限に金を注ぎ込める世界になってしまっている。本作もその問題意識が根底にある。

アダム・マッケイ監督「バイス」やジェシカ・チャステイン主演「女神の見えざる手」でも、この制度のグロテスクさは描かれているが、「スイング・ステート」はこの問題をよりデフォルメして描いている。アダム・マッケイ&スティーブ・フェレルの作品に比べると笑いが多く、政治以外の要素も強め。

「PLAN B」製作の作品は鼻持ちならないインテリ臭さを感じて、嫌な言い方をすると、あまりに啓蒙的(わからない奴らに教えてやるよ、的な)だと思っていたのだけど、本作は斯様によく揶揄される「傲慢なリベラル」を自己批判的に描いている節がある。スティーブ・カレルのキャラも必要以上に下品だ。

事務所で暴言吐きまくって慌てて空虚な言い訳を並べたり、「バーガーとバドワイザー」をめぐる一連のやりとりであったり、「都会のインテリが田舎をバカにしている」描写が繰り返される。要するに「だからヒラリーはトランプに負けたんだよ」という批判であり、過去の自分たちへの恨み節である。

ミッド・クレジットのおまけシーン、選挙戦を振り返るコメンテーターの言葉にもおなじにおいを感じる。ハリウッドの映画産業が基本的にリベラルなので、ラストベルトやホワイトトラッシュを描いても「相手の立場になって考えよう」的な切り口にしかならないのは不満なのだけど。