映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「飛行士の妻」感想

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飛行士の妻、観た。はじめてのエリック・ロメール。好きな女に粘着する青年が、街中で見かけた彼女の元恋人を尾けまわす…。このフランソワという男がなかなか酷い奴だ。公園で出会った、彼をからかう女の子との会話劇が白眉。これが面白すぎて、終盤は「他人の痴話喧嘩って基本どうでもいいな」と笑

訂正。「緑の光線」はすでに観てました。改めて今泉力哉エリック・ロメールホン・サンスのエッセンスを濃く受け継いでいるのだと知る。カットを割らず、屋内での緻密な導線とことばの応酬から、いま・ここの関係性を立ち上がらせる。手持ちカメラの生っぽさがたまらない。

「これは映画みたいな話なんだけど」と本人がメタ的に釈明するように、フランソワの一日は非常にドラマチックだ。そして、あのラストの「葉書」にまつわる顛末の喪失感。たしかに俺もガッカリしちゃったけど笑 あそこで感情が同期して、フランソワと同じ自分の気持ち悪さが炙り出された気分にも。

なんでお前が期待するんだよ、アンナがいるんじゃなかったのかと。一方、アンナから見ると朝は「飛行士」に振られ、昼はイラついたフランソワがギャンギャンと喚き、帰り道にヘンな男に捕まり…と、散々な一日なのだ。疲れきって泣き出すまで、彼女に一切寄り添わないフランソワの幼さ…いや、愚鈍さ!

そして、中盤の「ストーキング」の場面。リュシーの奔放さに惹かれる。終始、おどおどして余裕のないフランソワを面白がり、良き遊び相手として見ている。観光客のカメラで飛行士と女を撮ろうとするくだりは笑った。だから、そのあとのフランソワとアンナの痴話喧嘩は、もう勝手にやってくれって感じ。

終盤は、良くも悪くもフランス映画っぽい。こないだ観たアニエス・ヴァルダ「ラ・ポワント・クールト」も終始あんな感じだった。とはいえ、退屈させずに最後まであちこちに彷徨う男女の感情の波を見せ切るのはさすが。ここまで来たらお前らで解決してくれよ…と、ぼんやり思ってしまったけど笑