映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ひらいて」感想

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ひらいて、観た。好きな人の好きな人に近づく少女の物語。良くも悪くも山田杏奈の「顔」に勝負を賭けた映画だ。目論見は成功しているが、それ以上にパンチのある映画だとは思えず…。他者とふれる「手」や境界線の淡さを現す「桜色」のモチーフは印象的。ただ、印象的なだけで、面白くはない。

終始映像が薄暗いのもあまり好みではない。そう、悪い映画ではないと思うが、好きにはなれないというのが正直な感想だ。向かい合って立ったふたりが会話するような場面も多く、物語の根幹に関わるところも、個人的にビビッとくるような絵はなかったかなと思う。これも好みの問題だが…。

綿矢りさの原作を読めていないのであまり適当なことは言えないけれど、セリフの力や役者の表現力(もっと言えば、その表情の魅力)に寄りすぎかなあと思った。もっと人物の細かい所作や、視線の動き、ひとつのカットの中の動線で、見えてくるものってないのかなと。単に見落としてるのかもしれないが。

「ひらいて」とはなにを指すのかは映画を見ればわかるが、このテーマ設定はいいと思った。他人の交わる中で、閉じていた自分が壊れていく感覚。山田杏奈の何を考えているかわからない不確かさ。とにかく集団からふらっと居なくなる笑 これはファーストカットからラストまで一貫してますね。円環構造。

愛はとにかく他人に馴染めない人である。でも、たとえ君の手と爪をじっと見つめる。彼に惚れ込んでいる。無軌道で、おのれの欲に素直に従って、まわりの人間をかき回す。ある意味、場当たり的といってもいい。美雪の家の一連のシークエンスは彼女の衝動性が出ていてとてもいい。

愛は「ズレ」を認識してすぐハンドルを切るわけだが、たとえ君に対してはそのセンサーの感度が鈍い。彼女はつねに自分からメッセージを発するが、それを相手がどう受け止めるか、考えられていない。しかし、この手の思春期のエゴの物語は、そろそろ関心が薄れてきたかな…と。終盤の展開も妙に駆け足。