「エターナルズ」感想
エターナルズ、面白かった!紀元前から地球を護ってきたヒーローの物語。これまでのMCUヒーローのオリジンは「なぜ戦うのか?」を求める物語だったが、彼らは戦うために遣わされた神だ。戦いの人類史から立ち現れる再帰的な問いへの答えは極めてパーソナルだが、この手触りこそ神話的とも言える。
正直、この映画はエターナルズのコスチュームが仕上がった時点で勝ちだったと思う。王族のドレスのように華やかでありながら、宇宙人らしい異物感もある。クロエ・ジャオの映画は、地平線が印象的だ。僕ひとりの一生なんてこの地球に何ひとつ爪痕なんて残せないと思わせるスケール感がある。
これは道なき道を進み続ける「ノマドランド」のラストカットを思い出せばわかるだろう。選択の余地なんてないのだ。そうやって世界の終わりみたいに殺風景な野原でくらす人々を描いたクロエ・ジャオの厭世的なまなざしが、そのまま戦いに疲弊したエターナルズたちにも投影されている。
「ザ・ライダー」のブレイディや「ノマドランド」のファーンは、「そうとしか生きられない人たち」であった。ブレイディはロデオとしての道を絶たれても諦めきれず、ファーンは根なし草として放浪する人生しか選べない。ある意味、戦いの神として生まれたエターナルズも同じだ。これは運命の話である。
だからマーベルスタジオがクロエ・ジャオにこの物語を託したのも納得なのだ。アクションの演出は可もなく不可もなしの印象。中盤、アマゾンの森林での戦闘は画面が暗く、あまりテンションの上がるものではなかったが、クライマックスは見応えがあった。ほぼ「マン・オブ・スティール」だが。