映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「彼女が好きなものは」感想

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彼女が好きなものは、観た。BL好きの少女が告白した同級生には男の恋人がいて…。とても心動かされたんだけど、いざ感想を書こうとなると、彼らの物語を普遍的な何かに還元していいのだろうか、と葛藤してしまう。この世界を複雑なままに捉えるならば、ひとつの感想にまとめるのがもったいなくて。

純の視点から描かれてきた物語が、とある視点から語り直されるパート。これがとても良い。シチュエーション自体はありがちで、作品によっては非常に陳腐に感じる(アメリカの青春映画にありがちだと思った)けれど、ここの山田杏奈がとてもいい。訳も分からず泣いてしまったよ。

純と三浦さんはふたり一緒なのに、まったく相手を見ていない。純はいつも少し相手を突き放したような目をする。唯一、誠さんといる時だけにこやかだ。しかし、子どもからすれば頼りがいがある大人に見える誠さんも、まあまあ胡散臭いのである。ホテルでの逢瀬はかりそめのものであるとわかってしまう。

三浦さんもまた相手を見ていない。ファミレスで数学を教えてもらう場面。ひとりで腐女子ネタで盛り上がるが、純は関心なさげである。この関係がどう変化していくか。徐々に温度が上がっていくふたりの間の空気感!「好き」が解体され、また新たな「好き」が組み上がっていく過程の尊さ。