映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ジャンヌ」感想

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ジャンヌ、観た。救国の戦士が異端審問を経て、火刑に処されるまでを描く。リーズ・ルプラ・プリュドムの真っ直ぐな眼差し!史実では19歳だが、役者は当時10歳。屈強な兵士や皺だらけの司祭たちに囲まれるとその特異さが際立つ。物言う少女を「生意気」と見なす男たちの目は現代と地続きだ。大傑作!

ブリュノ・デュモンによる「ジャネット」の続編。しかしこちらはふつうの劇映画になっている。劇中流れるクリストフによる歌唱は、ジャンヌから神への問いかけをうたうものになっている。終盤、異端審問の場において明らかにそこにいる者たちが「神」を感じる場面があるが、劇伴がいい仕事をしている。

この映画のジャンヌは力強い。しかし、体は小さく、まだ「子ども」だ。甲冑も「着せられている」感じがする。乗馬をしても迫力はない。それでもカリスマ性を感じざるを得ない。凡庸な文句しか並べられない司祭たちと並んだとき、なぜジャンヌが畏れられているのかを知る。

甲高い声で余裕なく叫ぶ老人と、芯の通った声で冷静に打ち返すジャンヌ。「教会はお前を認めない」と云われれば、「私が仕えているのは教会ではなく神だ」と反論し、「教会を通してミサをする必要もない」とまで言い切る。ウソと欺瞞にまみれた権力への強烈なカウンター。だが、ジャンヌは処刑される。

イングランドとの戦いは、騎馬戦のような儀式として描かれる。舞踊のように行き交う馬の群れの真ん中でポツンと佇むジャンヌ。彼女だけが特異点としてほかと交わらない。孤独なのだ。殺風景な野原に立ってるだけの会話シーンは少々寂しいが、「お前は人間のクズ」と言い切る場面は緊張感あふれる。