映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「愛すべき夫妻の秘密」感想

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愛すべき夫妻の秘密、観た。伝説的シットコムを率いた主演夫婦の裏側を描く。「赤狩り」に追われる一週間と夫婦が成り上がるまでの過去が交錯する構成は、ざんねんながら不発だ。回想のせいでラストに至るまでの緊張感が削がれている。主演ふたりはうまいのかな?元ネタ知らないので分からず…。

ニコール・キッドマン演じるルシルはこの後制作会社を取り仕切るボスになっていくわけだが、みずからの城を守るのだという前のめりの姿勢が、現場では疎まれてしまう。女が意見を述べること、「不細工な妻」を演じること、その価値観の裏返しとして男に求められること。ここに焦点当てても良かった。

赤狩り」の時代にエンタメを作ること、居場所がなくなってハリウッドに流れ着いた男女が居場所を見つけること、プロとしての矜持と組織の論理で板挟みになること。これらの要素がうまく噛み合っていない。アーロン・ソーキンらしいシャープさをこの脚本に見出すことはできない。正直、ガッカリだ。

「愛すべき夫妻の秘密」という邦題はあまりに味気ない。ネトフリやAmazonの配信ありきの作品って、プロモ力入れる気のない作品はとことんつまらないタイトルつける。原題の「Being the Ricardos」は、直訳すると「リカルド夫妻であること」みたいな意味だが、物語を振り返るとなかなかいいタイトル。

この頃のラジオドラマ<テレビドラマ<映画みたいなエンタメ界の序列がわかって面白い。RKO作品の脚本が作中でディスられてるが、当時からあの薄っぺらさは叩かれていたのか。ルシルが妊娠したらスタッフからおめでとうも言われず「いや、どーすんのよ…」な空気になるのがキツい。

「妊娠」はセックスを連想させるから不謹慎。そんなバカバカしい価値観が幅を利かせる時代だった。ファミリー向けの番組には相応しくないらしい。だったらスポンサーがフィリップ・モリスの方がよっぽど不適切だと思うが。ここらへんの違和感にフォーカスしても面白かったのではと思う。

正直、夫婦の話にあまり関心が持てなかった。しかし、オスカーでは主演ふたりが演技部門でノミネート。リカード夫妻が何者であるか、アメリカ人なら常識なのかもしれないが、元ネタ知らない身からすると、あそこらへんの葛藤はわりとベタに見える。別に「知られざる…」と売りにするほどでもない。