「女と男のいる舗道」感想
女と男のいる舗道、観た。映画で眠くなるのに尺なんて関係ないな…というのが正直な感想だが、ミシェル・ルグランの旋律にどれだけ眠気を誘われようとも、アンナ・カリーナの魅力が勝ってしまう。レコード屋の商品みたいに扱われる女たち。ジャンヌ・ダルクの死とオーバーラップするラストに声が出た。
自分の身長いくつだろう?って拳で測ってみたり、クラブで楽しく踊ってみたり、かわいい表情を見せたと思えば、「裁かるゞジャンヌ」を観て涙を流したり、カフェで哲学者と愛と真実について語ったり、と予想もしない顔を見せてくれる。しかし、思えばオープニングの夫との別れ話は顔が見えないんだな。
レコード屋のカメラの横移動と、男に売られるナナの行ったり来たりを追う横移動が自分には重なって見えて、ナナがたくさんある内の一つでしかないレコード盤のように思えた。救いを失ったジャンヌ・ダルクの絶望の表情は、ナナの未来を暗示していたのだろうか。ラストから逆算にして色々繋がってくる。
クライマックスの哲学者との会話は興味深い。「誤りはなくならない。誤りから真実を探すためにドイツ哲学は生まれた」とか「人は無意識の時間を抹殺するために思考するんだ」とか。あと「人生を諦めてからの方が上手く話せる=思考できる」も。ナナは愛を知るには若すぎるがその前に死んでしまった。