映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アンネ・フランクと旅する日記」感想

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アンネ・フランクと旅する日記、観た。アンネとキティーを好きになる、興味を持つ。彼女たちが生きた時代に想いを馳せる。アンネを失った時、怒りや悲しみを感じる。そしてそれが決して「過去」ではないと知る。「Where is Anne Frank」という原題は秀逸。アンネの日記は単なる「教訓」じゃない。

スケート靴を履いて縦横無尽にアムステルダムの街を飛び回るキティー。その奔放さを愛おしいと思う。博物館になったアンネの隠れ家。当時に遡ると、そこは暗くてジメジメした、すぐ隣に死の匂いの漂う地獄。しかし、現在のアムステルダムは天国か?探し求めるのは「アンネの日記」の原本なのか。

伝承が形骸化した現在。橋、博物館、劇場…至るところにその名を冠するアンネ・フランク。しかし、本当のアンネは、彼女が遺したメッセージは、街に生きているのか。この世界はしっかり受け止めているのか。作り手の強い危機感が滲み出る。非常に教育的、かつ、啓蒙的だが、大事なことだと思う。

恥ずかしながらアンネの日記の存在は知っていても、その詳しい中身までは理解していなかったので、とても勉強になった。舞台を難民の受け入れ問題で揺れる現在に設定しているのもいい。問題意識と、その描き方の飛躍は「ディリリとパリの時間旅行」を思い出した。アニメーションならではの躍動。

ティーは日記から離れすぎると体がバラバラになる。文字から生まれた妖精なのだ。筆の跡とも取れる帯に分解されていく様は、切なくも美しく、見方によってはちょっとグロテスクで、すばらしい表現だった。「コングレス未来学会議」でも思ったが、アリ・フォルマンはアニメで「隠す」のがうまい。

「コングレス未来学会議」は、デフォルメされた「二次元」の世界が、かえって牢獄のように見えて気持ち悪かった。体がそこから抜け出せない苦しさ。アンネとキティーを物語のキャラクターにすることは、正直、史実を考えると抵抗があるが、アニメで表現することで中和されていたように思う。