映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「マイスモールランド」感想

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マイスモールランド、観た。ことしベストの一本。在留資格を失ったクルド人家族の生活を描く。優しさとか思いやりの話ではない。サーリャたちに寄り添う多くの「善良」な市民が登場するが、そもそもこの国の制度を支持しているのは私たち自身なのだ。嵐莉菜と奥平大兼のみずみずしい演技も光る。傑作!

コンビニでバイトしてると「日本語上手ねえ」いつお国に帰るの?」なんて品よく声をかける婆さんがいる。善意のつもりで。サーリャはワールドカップで日本代表を堂々と応援できなかった(演者の実体験らしい)。彼女はこの国で育ち、この国で夢を叶えようとしているのに。「難民」として除外される。

終盤、チョーラク一家に迫られる「判断」のあまりのグロテスクさに吐き気を催すが、そんなこと気にせず、彼らが働く工場で作られた製品や、コンビニのサービスを受けてヘーキな顔をしている。その中に自分も含まれるのだ。人権問題として理解はしても、あえて何か動くなんて考えたことなかったよ正直。

サーリャと聡太の距離感。初々しい青春の物語として見ることもできる。特にチークキスをめぐるくだりはドキドキしてしまう。けど、ここでもやはりサーリャが「難民」である事実が頭をもたげる。好きな人と一緒にいることすらままならない。この理不尽に大人は立ち向かわず、保身に走ってしまう。

じゃあ自分が藤井隆の立場でコンビニの店長だったら?ってのは考えてしまうんだよな。おかしいのは制度であり、その罪はそれをほったらかしにしている国民にあるのだが。難民申請が却下される場面は非常にショッキングだ。めんどくさそうな役人(田村健太郎)のツラがムカつくが、他人事ではない。

在日クルド人の風俗に触れられるのは貴重だ。あのチキン?がおいしそう。一方、家族4人でたのしそうにラーメンを「すする」場面も切ない。ずいぶん自然だなあと思ったら、キャスト全員本当の家族だった。みんなチャーミングで愛おしいんだよなあ。だからこそ、この国の現状へのショックも大きい。