映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ハケンアニメ!」感想

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ハケンアニメ!、観た。キャリア悩み中の自分にグサグサ刺さりました。吉岡里帆が最初のカットからどよーんとした背中でペンタブに向かうのがもう最高ですね。静かに燃える暑苦しい女を演じさせたら彼女の右に出る者はいない。一人でできる仕事なんてない。敵だと思ってたら…的展開もアツい。

モノづくりの現場。ギョーカイあるある的な過酷労働の美化は突っ込まれるだろうとは思った。なにかと手弁当で動かざるを得ない環境のようにも思う。ただ、いざとなったら拝み倒して進めないといけない時、胃がギュッとするような判断迫られること、どこでもあるよな。瞳監督に自分を重ねた。

ただ、ここに登場するような人たちのように、自分の仕事に誇り持ててるのかな?一生懸命やれてるかな?みたいなことは頭の中をぐるぐると回った。「やりがい」で頑張るのって時として危ういこともあるけど、やっぱり彼らは幸せそうに見える。ただ、基本的に仕事は苦しいものなんだと描いてるのは良い。

吉岡里帆が演じる瞳監督、あんまり笑わないんですよね。そりゃあのハイプレッシャーな現場でドタバタして、笑顔で仕事しろってのが無理だけど。だからこそ、隣の家の少年のくだりは特別なのだ。そして、彼女はどんどん成長する。自分の意見を言う。歩き方が変わってくる。目付きも違う。かっこいい。

「見えない目撃者」で出会った「泥臭くてカッコいい吉岡里帆」をもう一回見られた。これだけで嬉しい。柄本佑は言わずもがな。色気と余裕がすごい。尾野真千子中村倫也のやり合いも良い。口には出さない信頼関係。そして、小野花梨。フツーの人っぽいのに才能あふれる。「こんな人いそう」感すごい。

ただ「視聴率を競い合う」はめんどくさい説明省こうとした結果、逆にリアリティを欠いていたかな。配信のランキングやSNSのトレンドでも描けたはず。円盤の話は難しいにしても。ふたりの監督の葛藤は魅力的だが、その分、「覇権を狙う」対立軸はあまり機能していない。だって本人の目標じゃないから。

結局、モノづくりの話なので「いいもの作りたい」が最後に勝る。監督たちの戦いは「少しでも視聴率を伸ばすこと」ではないのだ。でも、それだけじゃ足りないし、やりたいことを勝ち取るためにやらなきゃいけないものがいろいろあって…といったあたりのドラマは、CPのふたりが担っている。

アニメパートのクオリティはさすが東映アニメーションが関わるだけある。フツーに面白い。「SHIROBAKO」「映像研には手を出すな!」「映画大好きポンポさん」「サマーフィルムにのって」などに登場する数ある「作中劇」の中でもきちんと「見たい!」と思わせる内容。全部観てないのに泣いたもん。

あと仕事は辛いのが前提の作品なので「辛くて泣く」シーンがないのは個人的に評価高いです。もちろん、感情が昂ったり泣いたりする場面はあるけど、それは「辛いから」ではない。そういう安易さは排除されていた。瞳監督がホンキで怒る場面はしびれた。役者は声だなと思った。もう一回見たい作品。