映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「PLAN75」感想

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PLAN75、観た。現代版「姥捨山」が導入された近未来の日本を描く。システマティックに「殺人」を隠匿したこの制度は、冒頭の犯罪者と何ら変わらないことを示唆する。未来というより現在の話だ。手続きのあっけなさや、都合の良い時だけ手際のいいお役所仕事に皮肉が効いてる。一見の価値あり。

是枝監督の弟子の作品といえば、「マイスモールランド」が挙げられるが、思えばあの作品もシステムの話だった。どんなに酷薄な仕打ちも、制度に組み込まれてしまえば、人間は黙ってそれに従ってしまう。ちょっとした違和感は飲み込んでしまう。とくに、この国においては。「仕方ない」と諦める。

全編にわたって抑制が効いている。役者に余白を与え、その中で表現させるから、描かれていない背景にまで観客の目線は届く。倍賞千恵子の「手」がいい。何かを終えるたびに彼女は布巾でロッカーや出前の寿司のお盆を拭く。そういえば、彼女はホテル清掃員の仕事をしていた。上品な語り口も良い。

思い出のクリームソーダ。非常に残酷である。その後の場面の河合優実!声の震え、心の揺らぎ。対峙しているのは生身の人間だ。磯村勇斗もまた彼女と同じように、この世界の案内人の役割を果たす。ベンチの改修の場面は、意地の悪いコントのようで笑えるが、あそこに限ってはフィクションですらない。