映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「未亡人」感想

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未亡人、みた。芸術のため童貞を貫いてきた美大生。しかし、そんな彼を「面白い」と受け止める周囲の人間にも変化が生じていて…。十字架担いでチンピラにバイト代スラれるヴィア・ドロローサ。恋人できた友人をユダと罵る彼の生態=イエスの道程は楽しいが、あまり掴みどころが分からず…。

監督が主演も務めているらしい。あの骨と皮だけの身体だけ見ても被写体としては最高だなと思う。あのガリガリの身体でデリヘル嬢に「ピエタ」を実演させて、売春婦は古来から尊いんだと説き悦にいるのは最高に気持ち悪くて面白い。映像のトーンも結構好きだ。

陸前高田の空撮もいいけど、正直お話とのつながりが読み取れなかった。決意表明のようなラストは「ああ、そっちに行くんだ」って感じで、イマイチ腑に落ちない。いろいろ裏切られて堕ちていく過程まではとても良かった。友人カップルのイヤ〜な感じは好きでしたけど。感想おしまい。

「MOTHERS」感想

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MOTHERS、みた。生みの母、育ての母、いまの母。心身共に不安定な元ヤクザの父のもとで暮らす監督が、姉と共に三人の母と向き合い、家族の呪縛を清算するドキュメンタリー。超絶大傑作!短気で攻撃的ながら優しさも見せる父が憎めない。ファミリーヒストリーの枠を超えた壮絶な物語。惚れた。

ことしは東日本大震災で被災した広野町の現在を描いた「春を告げる町」や地方政界の恥部を追う「はりぼて」、人気アイドルグループの躍進と崩壊、再生の希望を描いた「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」とドキュメンタリーで傑作続きだが、「MOTHERS」は間違いなくその中に食い込んでくる。

テレビ報道の欺瞞を暴く「さよならテレビ」や、青臭くもがき続ける政治家を追う「なぜ君は総理大臣になれないのか」もよかった。「MOTHERS」は冒頭から豪邸に引き篭もる父の日常。リンチに遭って以来、満身創痍の男の情けなくだらしない身体。半裸で換気扇の下、割り箸にタバコを挟む姿が悲哀を誘う。

映画は生みの母・アナリンの親戚を名乗る男からメッセージが届いて以降、加速し始める。この従兄弟はなかなかの弁の立つ男で、かなり胡散臭いのだが〈清算〉のキーマンになっていく。このあたりは監督の構成のうまさ。引き込まれる展開。被写体に寄り添いながら一定の距離を保っているのがすごい。

父との会話はやはり親子のそれだし、アナリンとの再会前後で(照れ隠しもあるだろうが)テンションの落差が激しい姉、その素直な背中。肌の温度が分かるぐらい近くに感じた。どこまで監督の作為なのだろうかと疑いたくなるキャラの濃さ。カバーを被ったランボルギーニからして引きが強すぎる。

アナリンの「お父さんを大事にしてね」の言葉でスイッチが入り、止まらなくなってしまった姉の迫力よ。「感謝はしている。でも、早く死んでほしい」と。これだけ強い言葉が出てくるなんて、また、それを引き出した(あるいはそういうシチュエーションを組み立てた)監督のエグさよ。

立ち位置的には「行き止まりの世界に生まれて」に近いのかなあ。カメラを持つことで家族との距離を再定義する試みのようにも見える。「行き止まりの〜」は個人的に良くも悪くもホームビデオ的面白さの域を出なかったのだが、「MOTHERS」はもう一歩映画的に踏み込んだ魅力があった。

ただ、この未完の物語(このワードチョイスすら若干憚られるが)を、実在する個人の人生をどこまで面白がり、好き勝手に語っていいのかという葛藤はあるのだけれど。とにかくことしのドキュメンタリー、いや、新作映画の中でもトップクラスに好きな映画でした。感想おしまい。

「頭痛が痛い」感想

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頭痛が痛い、みた。優等生と不登校。「死にたい」を抱えるふたりの少女が、ひょんなことから心を通わせ、やがて逃避行を計画するが…。禍々しく映される建設途中の新国立競技場と足を絡ませ合うラブホテルのベッドの温度差!共感と断絶を行き来するこの質感はリアル。でも、ちょっと長い。

やはり逃げ込む先はラブホテルなのか。新海誠「天気の子」を思い出す(その元ネタは山本文緒ネロリ」だが)。保健室のカーテンや、ラブホテルのベッド、森に踏み込む手前の橋、木々の合間に現れるふたりを遮る空間など、境界線の演出が面白い。スマホ画面の使い方も初めて見た。

「死にたい」なんて軽々しか言うなよと思うけど、一方で吐き出すことで楽になる人もいれば、SOSのサインを拾ってくれる人もいる。悲しみや苦悩に重みの差なんてないのに、誰でもオープンに発信し、評論家になれるSNSは、僕たちの感情をつまらない記号の枠に押し込め、序列化してしまう。

不登校の子の父親や、援交の描写など、ちょくちょく定型的で面白みのない演出があるのは残念だった。「ミッドナイトスワン」への批判を引き合いに出すのは違うかもしれないけど、この手のテーマを扱うなら慎重になるべきかなとは思ったり。感想おしまい。

「もとめたせい」感想

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もとめたせい、みた。ある日突然同級生の男子に「ブラジャーを着けてみたい」と打ち明けられた相川は…。フェティッシュな秘密を共有する中で芽生える気持ち、一方、男子の無邪気な願望は期せずして相川に社会の抑圧を気付かせることになる。無残に切り刻まれたブラジャーがショッキングだ。

一緒にブラジャーを選ぶ場面の相川。あの笑顔を見て、ああ、これは好きになったんだなと。男子の告白をすんなり受け入れるのが面白い。彼の好奇心はけっして倒錯などではないが、彼がなぜ相川に打ち明けようと思ったのかは気になる。何事にも動じなさそうな落ち着きはあるが。

ブラジャーを女性の抑圧と捉える演出は、70年代ウーマンリブ運動におけるブラレスのデモを連想。ブラジャーという「女性的」な領域に男子が土足で踏み込む危うさが、そのままブラジャーに象徴される社会の暴力的な眼差しに同期しているようにも思う。女性の感想を読みたい映画。

「へんしんっ!」感想

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へんしんっ!みた。PFF2020グランプリ。自らも電動車いすを使う石田監督が障がい者の表現の可能性を探るドキュメンタリー。健常者と障がい者の壁、そして障がい者うしの壁。振付師の砂連尾理に導かれながら、表現を通じ自らの身体性を受け入れていく。ラストの舞踊の多幸感!これこそユートピアだ。

徹頭徹尾、これは対話の映画であると思う。石田監督は「頑張ってるね」と言われても実は嬉しくないと語る。障がい者というカテゴリーから自分を規定されてしまうもどかしさ、苦悩。それは障がい者に限った話ではないが、しかし、その壁を越えるには生身の対話しかないのだと思う。

半身不随の障がい者と、視覚障がい者と、聴覚障がい者。それぞれに見えている世界が違う。当事者の口から漏れる「障がい者どうしでも壁がある」との言葉は、その字面以上に深刻な響きを帯びているだろう。女性どうしですら時に「生理」に関する認識のすれ違い、無理解があると聞いたことを思い出す。

だからこそ腹を割っての対話なのだ。視覚=文字、聴覚=音声といった共通言語が封じられた結果、最終的にこの映画で行き着く「対話」の手段は、身ひとつで表現されるダンスであり、身体的接触である。健常者も障がい者も入り乱れ、お互いの体温を確かめながら舞うラストのダンスは素晴らしかった。

みんな本当に無邪気に、楽しそうに笑っている。そこにはしがらみなんて何もなくて、校庭で走り回る小学生みたいに純なものに見えた。しかし、石田監督はあの対話の輪に入っていたのだろうか。そして観客は、画面の向こう側で展開される対話を理解できていたのだろうか。ただの傍観者ではなかったか。

しかし「新しい生活様式」とやらが叫ばれるようになってから、身体的接触のハードルは上がっているように思う。2020年にあの集団でのダンスパフォーマンスを撮影するのはほぼ不可能だったはずだ。劇的な社会状況の変化を経て、映画で描かれている対話はすでに遠い過去の出来事のように思えた。

「みをつくし料理帖」感想

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みをつくし料理帖、みた。大洪水で生き別れた幼なじみの二人。数年後、澪は江戸で評判の料理人に、一方の野江は吉原の花魁として頂点を極めていたが…。奈緒の儚げな美しさ!彼女は命削って輝いてるんだ。面白かったけど近くて遠い吉原の幼なじみの話なら「居眠り磐音」があるしな〜と思ってしまった。

江戸の町人文化ってやはり憧れますね。吉原に売られる女性もいたり、当然明るい面だけではないけれど。出てくるご飯はみんな美味しそうでした。映画の作りは丁寧かつシンプルで、特段触れるべきところはない。俳優の演技は時代劇なのでああいう感じが普通なのかもしれないが俺は肌に合わなかった。

藤井隆演じる劇作家はいいキャラしてる。彼と薬師丸ひろ子のやり取りはコント臭がキツくて映画見てる感じがしなかったが。その中でやはりテンション抑え気味の奈緒が輝いてる。松本穂香は安定。故にと言うべきか最近どの映画の演技も同じに見えてしまうのが玉に瑕。あと現代劇の方がハマる気がする。

あと窪塚洋介のそこに居るだけで事件起こりそうなオーラはもう唯一無二。カリスマ感が凄い。テーマ的にもっと暗い話になるかと思ったけど、わりとちょうどいい温度感の映画だった。が、あんまり印象に残らないかも。

「望み」感想

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望み、面白かった。行方不明の息子にリンチ殺人の嫌疑が掛けられた家族。息子は加害者か、被害者か。絶対に犯人ではないと信じる父と、加害者でいいから生きていててほしいと願う母。こういうサスペンスを定期的に見たい。野木亜紀子が一話完結ドラマで書いてそう。エンディングで脳内に感電が響いた。

「MIU404」や「アンナチュラル」向きのお話だなって、わりと本気で思ってる。ここでトランペットのイントロ入ったら気持ちいいだろうなってポイント、3個ぐらいあった。連ドラの1エピソードでこれが出てきたら大絶賛されただろう。もちろん映画としてもふつうに面白い。少々大仰なところはあるが。

堤真一の演技がちょいコッテリ味付けだったけど、石田ゆり子はよかった。最初あまり母親の思考回路が理解できなかった(「じゃあ規士が死んでてもいいってこと!?」って急に怒ったり、軽率に週刊誌の記者と連絡とったり)けど、それもまた彼女なりの覚悟であり、息子への愛なのだと。

清原果耶が珍しく明るくて普通の女の子だと思ったら、やっぱり不幸な目に遭う笑 彼女の泣きの演技が一切ない作品って、これまであったかな…。それだけ人間のマイナスな感情の表現に長けているということだけど。松田翔太演じる記者の立ち回りがなかなか意外で面白かった。相変わらずのジョーカー感。

清原果耶が珍しく明るくて普通の女の子だと思ったら、やっぱり不幸な目に遭う笑 彼女の泣きの演技が一切ない作品って、これまであったかな…。それだけ人間のマイナスな感情の表現に長けているということだけど。松田翔太演じる記者の立ち回りがなかなか意外で面白かった。相変わらずのジョーカー感。