映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「羊とオオカミの恋と殺人」感想

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羊とオオカミの恋と殺人、みた。隣の部屋に住む美少女が殺人鬼だったら…。これはラブコメらしい。であるならば、ドギマギする駆け引きや、本当に自分の方向いてくれてる?って不安、相手に屈する喜びを、もっと丁寧に描いてほしかった。福原遥が猟奇的って、すごく魅力的だけど。中途半端かな?

どうせならもっとグロテスクに、コミカルにやるなら過激に、と思ってしまい、途中すこしウトウトしてしまった。新しいテイスト狙ってるんだろうけど。結局のところ恋は盲目、いや、狂気ってことなのだろうか。可愛いは正義。可愛かったら、殺人鬼でも「まるっと」好きになれてしまう?

江口のりこは捉え方がよくわからないこの映画に、コミカルな空気を吹き込んでいて、ちょうどいいバランサーだったと思う。杉野遥亮はあいかわらず表情が固い…。

「クレイマー、クレイマー」感想

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クレイマー、クレイマー、大傑作!家族を顧みなかった夫と、自由に羽ばたきたかった妻。父としても夫としても失格だったテッドがだんだん〈必死〉になる。ケガの息子抱えて街を走り、クリスマスに職を探し、最後はすべて〈息子のため〉に…。一度は愛したジョアンナとの裁判で傷つけ合う場面は震えた。

フレンチトーストの出し方がいいよね。はじめのテッドの雑すぎ料理法にはだいぶ笑ったけど、思い返せば、あれが〈父〉としてのスタートで。それが最後、〈父〉としてテッドの一つのゴールになる。時間の経過を感じさせて、そしてもういろいろ戻らないものがあるんだと気づかされて、切なかった。

大人って狡くてバカだなあと思うのは、テッドとジョアンナの後悔です。失って初めてわかること。散々傷つけあって当日の朝にならないと気づかないこと。もうダメだ、ぜんぶ手遅れかもしれないと。それでも人生は続いていくし、いまさら自分を変えることもできないけれど。

それでも、最後にエレベーターで二人が交わした瞳には、たしかに希望があった。この映画が清々しいのは、これから先なにがあるのかはわからないけれど、きっとこの三人には明るい未来があるんだろうってことだけはわかるから。正解はないから手探りだよねって苦々しさも含めて。

「幸福路のチー」感想

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幸福路のチー、大傑作!祖母の死をきっかけに米国から故郷したチーの半生と激動の台湾現代史を描く。だれもが自信を持って人生の選択ができるわけじゃない。不安と航海の迷路をさまよう中でフラッシュバックする子どもの頃の思い出とおばあちゃんの教え。たくさんの愛を受け取りました。ほっこり。

「幸福路のチー」はアイデンティティの物語でもある。チーに流れる血の四分の一は少数民族のそれであるし、地縁血縁のしがらみのつよい地元から逃れるようにアメリカへ移住している。教室での北京語の使用にも現れるように、台湾と大陸の対立の話でもある。常に感じる疎外感。

「ニーナ・ウー」感想

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ニーナ・ウー、大傑作!下積みの末、話題作の主演を掴んだニーナだったが、とある〈悪夢〉が彼女の現実を蝕むようになり…。Metoo運動に触発されたサスペンス。乱切りの虚構とメタファーが観客を振り回す。作品全体を覆う、常に不安や恐怖に追い回される焦りや緊張感こそ〈告発〉なのだと思う。

サスペンスとしては非常に見応えがあったし、かなり好きな部類。だけど、一方でこれがMetoo運動から始まった一連のムーブメント、そして社会に蔓延るジェンダー不平等という高度に政治的かつタイムリーな話題をあつかう映画として、百点満点パーフェクトな手法かというと、俺は危ういラインだと思う。

たとえば「女の敵は女」要素を入れてくるのは、正直疑問。至るところにギミックが仕掛けられていて、絶対の正解が提示されていない多層的な構造は素晴らしいけど、テーマの扱い方そのものに驚きはなかったかも。脚本は主演も務めるウー・カーシーだが、女性が監督だったらどう変わるのだろうか。

キキ関連のエピソードはやりたいことはわかるけど、もう少しシャープに処理できなかったのかな。正直、展開上そこそこ足かせになっていると思う。文句多めになってしまったけど、方向性が見える中盤以降はスリリングで見ごたえがあった。狂わされていく個人の内面をああやって撮るのはとても映画的だ。

「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」感想

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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション、面白かった。原作は知らないけど、そんなのまったく関係ない!小学生レベルの下ネタとスレスレの不謹慎ギャグのつるべ打ち。しかし決めるところはカッコよく。クールな長回し&一人称視点と流れるようなアクションはさすがフィリップ・ラショー。

「真夜中のパリでヒャッハー!」のメンバー勢ぞろい。正直、あの三人が並んでるだけで反射的に笑う。あのなにも考えてなさそうな、頭からっぽにしか見えない顔つき!明らかにこいつらのせいで人死んでるし大惨事のはずなのだが、もはやここまでくると一周まわって納得してしまうのである。

これはフランスでしか作れない映画かもしれない。ハリウッドでは難しいだろう。ああいう覗きとかパンチラのギャグはこの時代すでに一般的なものではないし、完全にひとつの〈世界観〉として受容するしかないと思うけど、お堅いことは抜きにして、すごく自由にネタを詰め込んでいて清々しかったです。

「昨夜、あなたが微笑んでいた」感想

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昨夜、あなたが微笑んでいた、大傑作!歴史あるプノンペンの集合住宅、ホワイト・ビルディング。日本企業の買収により住民たちの強制退去が始まる。これは二度と帰れない〈我が家〉へのラブソングなのかもしれない。コンクリートの壁に染み付いた生活の匂いはもう戻ってこない。 

すごく淡々としていて刹那的で、遠くの国で起きた、映画館に来るまで全く知らなかった歴史のはずなのに、心がヒリヒリするぐらい切なくて、懐かしくて、哀しかった。時代は変わる。都市は進化する。生活は豊かになっていく。でも、その変化に取り残される人がいる。たしかに誰かが泣いている。

立ち退き問題で揺れながらもホワイト・ビルディングでの束の間の日常を楽しむ人びとの姿がインサートされる。裸で廊下を走り回る子ども、布製のベットでまどろむ男、少しずつ道具の減りはじめたリビングでテレビを眺める監督の家族。映画の中ではほんの一瞬だったが、とても強烈に残っている。

カメラと被写体の距離が近い。ホワイト・ビルディングの住人たちはカメラを常に意識している、その存在に時に抵抗感を示しながら、最後のひと時を過ごしている。恥じらいながら歌を披露する人、ポルポト時代よりは補助金が出る分マシかもと笑う老婆。そして、いまの想いは語りたくないと拒絶する父。

取り壊しの始まったビルで、無残にも崩れかかったコンクリートの壁の破片を愛おしそうに拾い、なでる父の姿が印象的だった。瓦礫の一つひとつにここで過ごした何十年の臭いとか汚れとか、ぜんぶ詰まってるんだろうな。お金をもらったり、きれいな新居に引っ越しても埋められないものがあるのだ。

「わたしは光をにぎっている」は土地そのものが主人公だったけれど、「昨夜、あなたが微笑んでいた」も究極的にはホワイト・ビルディングが主人公なのだと思う。〈あなた〉へのまなざしがとても優しく、一方でこの建物に待ち受ける運命が残酷だった。あのラストカットは忘れがたい。

「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」感想

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男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け、みた。とらやに転がり込んだ"画家"と借金抱えた芸者のぼたん。寅さんから始まる思いやりの連鎖。思えば、彼が上野の飲み屋で老人を拾わなかったら、このハッピーエンドはなかった。立場を超えて心通わせ合う幸せ。めずらしくマドンナと恋に落ちないのも面白い。