映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「あいが、そいで、こい」感想

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あいが、そいで、こい、をみた。イルカの調教師を目指して台湾からやって来た留学生とのひと夏の物語。王道のボーイミーツガールながらフレッシュ。紀伊田辺の海の輝くような美しさ!リン=小川あんの透明感と、亮=高橋雄祐の泥臭さのコントラストも良い。カラッとした夏の暑さが恋しくなる映画。

この手の物語は「いかにヒロインが魅力的か」に面白さがかかってるわけだけど、小川あんの存在感はすばらしいですね。中国語なまりの日本語もうまい。あの妙な脱力感は「リンダリンダリンダ」のぺ・ドゥナを思い出すが、単身日本にやってきただけではない寂しさ、その裏返しの強気な態度が愛おしい。

亮の「ガキ」な態度は、やり過ぎると幼過ぎるし、定型的になってしまうのだけど、そこは絶妙なバランスでしっかり一人の血の通った人間になっている。それは彼のまわりの友人のキャラクターに負うところも大きいだろう。とくにルールは破らない=絶対に青信号を待つガリ勉がいいアクセントになってる。

2001年という時代設定もいい。たまたま昨日みた「回路」の公開年と同じだ。もう20年前にはなるが…。みんないい大人になっている。現在進行形ではない、過去形の物語だからこそ、ただ「懐かしい」だけでは収まらない心の痛み、あの時ああしておけば、もっと素直に打ち明ければ…という後悔が重く残る。

「回路」感想

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回路、みた。死者が現世になだれ込み、日常が崩壊していく様を描くホラー。ちょっと寝落ちしてしまったので、すべてを掴み切れたわけではないのだが…最近の作品のルーツはここにあったのだと知る。あいかわらず「見てはいけないもの」を見てしまった気味の悪さ、この世の底にあるものに触れる感覚。

この映画の面白さは2001年の映像だからこそ、ブラウン管とVHSの時代だからこそ、ではあると思う。インターネットから世界の深淵につながるアングラ感。画面の向こう側の「写り込み」がやはり面白い。あれ、ここに見えるのって…という恐ろしさ。特に最後の小雪のところが。死ぬとシミになるのも嫌だ。

「さんかく窓の外側は夜」感想

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さんかく窓の外側は夜、みた。うーん、期待に反して薄味だった。「幽霊」や「呪い」の説明がふんわりしたままお話が進むので、中盤以降の攻防にすんなり気持ちが入らず。岡田将生と志尊淳という圧倒的に顔の良いふたりがスクリーンに収まるだけで見れてはしまうのだが。平手友梨奈平手友梨奈だった。

音楽はけっこう好みだった。ちょっぴり洋画テイストも感じられる。映像はというと、さすがCMディレクター出身監督ということもあってか、普通の景色のはずなのにどこか異世界のような雰囲気になっていた。ただ、街中の人をみんな黒い服で統一したのは、意図はわかるけど、そんなに好きではない。

ふたりが除霊するときやたら身を寄せ合ったり、なにやら運命めいた繋がりを感じるのは、原作のカラーなのか。おそらくはBL的な要素があったところを、映画化にあわせて希釈しているように見えるけど、逆にそこを奪ってしまったせいで軸がぶれた気がする。この映画の何を見れば良いのかよくわからない。

あとこれは完全に好みの話なのだけど、出てくるシチュエーションがことごとく「箱」なんだよね。それが気に入らない。冷川の事務所、三角くんのおうち、それからクライマックスの舞台。別に会話劇中心のお話でもないのに、あまり広さを感じられなかった。逆に冷川の過去パートはとてもよかったと思う。

「スミス都へ行く」感想

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スミス都へ行く、面白かった!汚職にまみれた政界で自由と理想のために正義を貫くスミスの物語。いやぁ、終盤のフィリバスターは圧巻だった。血の流れない殺しあいとも言うべき壮絶な闘い。アメリカの民主主義はこの頃から変わっていない。輪転機がツイートに代わっただけだ。苦々しいハッピーエンド。

ただ、ひとりの男の執念が世論を動かすカタルシスをそのまま受け容れていいのだろうか。「十二人の怒れる男」を見たときにも同じことを思った。スミスの戦いは自由と正義とプロセスを重んじるアメリカの精神そのものであるし、非常にヒロイックではあるけど、あのオチが民主主義的なのかというと…?

「オール・ザ・キングスメン」のスタークは、スミスが権力に溺れた未来の姿なのかもしれない。セットで見たい作品だ。ワシントンにやってきたスミスが、ベテラン議員や記者たちにピエロにされる序盤は意地悪なコメディ。ジェームズ・スチュアートの演技がアホに振り切りすぎて危うい人にすら見える。

ペイン議員を演じるクロード・レインズがとても良い。人の良さそうな紳士然とした外見と、陰湿で腹黒い内面のギャップがいかにも「政治家」である。どちらにも振り切れないグラデーションが、場面ごとに異なる彩りを与えていて、単なる悪役とも言えない、魅力的な人物になっていた。

心の内が読めない上院議長も面白いキャラだったなあ。そしてこの頃の映画にしては珍しく「恋仲」とも言い切れない関係に発展するヒロインのサンダース。ジーン・アーサー、あんまりよく知らないけど良い。傍聴席からの目線の会話が楽しい。よく考えるとスミスの奮闘はほとんど彼女のおかげ。

「さびしんぼう」感想

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さびしんぼう、みた。超絶大傑作。富田靖子がとてつもなく可愛い。なんであんなに儚い笑顔をするんだろう。「人を恋することはとっても寂しいから、だから私はさびしんぼう。でも、寂しくなんかない人より、私ずっと、幸せよ。」と。セピア色の尾道の景色と彼女の美しい横顔がこの目に強烈に焼き付く。

ヒロキは望遠レンズ越しに見た百合子の横顔に恋をする。見える面と見えない面、過去の母と現在の母、百合子とさびしんぼう。百合子は海の向こうの島からやってくる。必然的にそこには此岸と彼岸の境がうまれ、そうと示されずとも生と死のモチーフが浮かび上がってくる。あのラストは妙に不穏に感じる。

キンタマ」を連呼する序盤のドタバダ劇はあまりに下らなくて笑った。しかし、良い映画というものは見終わった後になぜかスクリーンの中を旅したような感覚が残る。羽田空港のロビーに降り立ち、じゃあまたねとお土産とキャリーバッグ引きずりながら友人に手を振り別れるような寂しさ。

この映画にはそういう感覚がある。終わったあと、ふとお寺の鐘堂にちょこんと座るさびしんぼうの姿が思い出され、ああ、またあの場所に帰りたいとなる。百合子を送るため、一緒にフェリーに乗る場面。ふたりを照らす夕陽の奇跡的な美しさ。俺もこの目で直接あの景色を見たのではないかと錯覚する。

ショパンの「別れの曲」も耳に残る。富田靖子はおばさんになってからしか知らなかったので、こんなに可愛かったんだと(いまも素敵ですけど)思った。俺の中では「鈴木先生」の足子先生のイメージだったので。しかし最後の別れのシーンは「ブレードランナー」のルトガー・ハウアーのようであったな。

「上海特急」感想

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上海特急、みた。混乱続く中国の汽車で、かつての恋人と再会した冷徹な女がふたたび愛を自覚する物語。と、言いつつウトウトしてしまったので話の筋を追えている自信はない。マレーネ・ディートリヒの浮世離れした美しさは見どころだが、それ以外はそれほど…という印象。偏見まみれの中国描写は注目。

冒頭の雑踏を過ぎる汽車の場面はおそらくオープンセットでの撮影だが、なかなかディテールが凝っていて面白い。しかし、全体的に中国人はステレオタイプ的にしか描かれておらず、さすがに時代が古いなと感じてしまう。ラストの「隠れてキスするために恋人たちは駅に来るのよ」という台詞はキザで好き。

「晩春」感想

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晩春、みた。いままで通り父との暮らしを望む紀子と、彼女を気遣って結婚を勧める周囲の人びと。やもめの父に対する紀子の感情は、単なる心配を超え、少々倒錯した嫉妬や独占欲のようにも見える。京都旅行の枕を並べる場面が妙に艶めかしく感じられたのは自分だけだろうか。とても面白かった。大傑作。

当時の結婚観や男女の貞操観念がよく分からないので、何をどうやって読み取ればいいのか、正直計りかねているところもある。「お父さんのこととっても嫌だったんだけど…」のあとに続く言葉、それから、ふたりが本心を語り合うクライマックスの場面で挿入される壺のショット。アレ何でしょうね。

部屋の真ん中にポツンと置かれた壺。俺にはどれだけ言葉を尽くしても交わることのない父と娘の孤独が、あのショットから伝わってくる気がした。同じ空間にいるのに、ぜんぜん違う景色が見えている。自己犠牲的に娘を「嫁に遣る」父の気持ちとは裏腹に、それは娘にとっては残酷な追放のようにも映る。

そのあとの小野寺と父親の会話もいいな。「女の子はつまらない。せっかく手塩にかけて育てても嫁にやることになる」と。それはまた自分が奥さんを迎えるときにやったことでもあるのだが。一人になった父は、自分でハットとコートをハンガーにかけ、リンゴを剥きながら静かにうなだれる。

「晩春」とは強い絆で結ばれていながらも、つねに孤独を感じ続けてきた父と娘の卒業の物語なのではないかと思う(卒業という言葉はぜんぜんしっくりこないが、他に適当な表現も見つからないので…)。「秋刀魚の味」は以前見たけど、同じテーマながら180度異なる印象を受けた。もっと小津を見よう。

原節子演じる紀子は、そこに性的な意味を含むかどうかはともかく、母親の代わりに世話をしているというよりも、父親のことを疑似的な夫とみなしているように感じたのだけど、実際のところどうなのでしょうね。女性の感想も聞いてみたい。