映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

「パブリック 図書館の奇跡」感想

パブリック 図書館の奇跡、みた。大寒波のシンシナティで図書館を占拠する70人のホームレスと、彼らと共に立ち上がる職員の姿を描く。声なき者が声を上げる。たとえ世界が変わらなかったとしても「私はここにいるんだ」と主張するために。図書館は市民社会と…

「孤独なふりした世界で」感想

孤独なふりした世界で、大傑作!人類が死に絶えた地球で孤りぼっちのデル。空き家整理をしながら自分だけの楽園を作る彼のもとに風変わりな少女が現れ…。けっして青空の見えない。薄暗い世界。なのにふたりの間をながれる静かでゆっとした時間が心地よい。案…

「透明人間」感想

透明人間、面白かった。夫の束縛から抜け出したはずのセシリアの身に、不可解な出来事が起こり始め…。2時間ひたすらスクリーンに噛り付いてしまう映画でした。何もないはずの空間にただよう圧、自分にしか〈見えない〉ものが〈見える〉。騒げば騒ぐほど疑わ…

「顔たち、ところどころ」感想

「顔たち、ところどころ」みた。アニエス・ヴァルダと気鋭の芸術家JRによるドキュメンタリー。フランスの田舎町を巡りながら市井の人ひどの写真をあらゆる壁に残していく。炭鉱の元労働者、ウェイトレス、工場の職員、トラック運転手…みんな自分の写真見て誇…

「マルモイ ことばあつめ」感想

マルモイ ことばあつめ、みた。傑作!日本統治下の韓国で母国語を遺そうと辞典作りに奔走した人びとを描く。ことばが奪われていく屈辱と怒り。命を賭して戦う彼らの気高き誇りに感動すると共に、日本の占領政策のグロテスクさに改めて驚く。なかなかこの映画…

「ドロステのはてで僕ら」感想

ドロステのはてで僕ら、みた。自宅のテレビと下の階の喫茶店のテレビが〈2分間の時差〉で繋がっていることに気づいたオーナーのカトウは…。ちょっと先の未来が見えるテレビを巡る〈すこし・ふしぎ〉な騒動を描く。少々複雑だがこのこじんまりしたスケール感…

「なぜ君は総理大臣になれないのか」感想

なぜ君は総理大臣になれないのか、みた。代議士・小川淳也の17年を追うドキュメンタリー。泥水をすすりながら理想を求め続ける彼の政治家人生は挫折の連続だ。「政治家に向いてないのでは」と自問自答し、声を枯らして選挙運動をする姿に胸が熱くなる。日本…

「1001のバイオリン」感想

1001のバイオリン、みた。原発事故を機に東京に越した達也。職もなく家族に疎まれ気味の彼は現地に残した飼い犬を探し始める。受け止めたら全て無かったことになってしまうのではないか。「こうなったら地獄へ落ちてやれ」と。探しているのはタロウではない…

「私がモテてどうすんだ」感想

私がモテてどうすんだ、みた。腐女子の芹沼は推しが死んだショックで激ヤセし、誰もが羨む美少女に変身するが…。わりと危ない橋を渡っている。荒唐無稽な掴みを強引に押し切るミュージカル、気合の入った長回しなど見どころアリ。山口乃々華のダンスよ!しか…

「青 〜chong〜」感想

青 〜chong〜、みた。面白かった!李相日監督の卒業制作。朝鮮学校に通うテソンの恋と青春を描く。ただ誰かを好きになったり、姉が恋人を連れてきたり、仲間と野球をやるだけで何かしら特別な意味が付きまとってしまう、在日コリアンの生き方。高校の描写が…

「魚座どうし」感想

魚座どうし、みた。心が壊れた母と暮らすみどりと、宗教に没頭する母に連れ回される風太。ふたりの運命が交錯する瞬間…。大人が怖い、とにかく怖い。ヒステリックな先生、怒鳴る中年、ふたりの母親。子どもの世界ってこんなに空気淀んでたっけ。とにかく息が…

「あみこ」感想

あみこ、みた。キラキラしてない青春映画。常に苛ついているあみこ。アオミ君と前に話してから半年経った…と指折り数える。Radioheadで盛り上がった彼はどこへ?と。あのモヤモヤを俺もよく覚えている。自由なはずなのに息苦しい。ぐっと力の入ったあみこの…

「ディア・ハンター」感想

ディア・ハンター、傑作!これ見ると「命さえあればいいことあるさ」なんて軽々しくは言えないなあと思ってしまう。戦争は人を変える。大好きだった鹿狩りも、仲の良かった友人たちとの会話も、もはやベトナムへ行く前とでは全然違う。賭場のニック=クリス…

「呪怨:呪いの家」感想

呪怨:呪いの家、みた。あとからじわじわ迫ってくる怖さ!振り返ってみれば平成初期は猟奇的殺人事件の続く〈呪いの時代〉だった。実在の事件をモデルにしているがすべて被害者は女性。父なる者への嫌悪も見え隠れする。シンプルだけど人間って何しでかすか…

「のぼる小寺さん」感想

のぼる小寺さん、みた。ボルダリングに励むクラスメイトの小寺さんとそんな彼女を見つめる近藤。小寺さんがのぼる。ひたすらのぼる。その姿に僕たちは勇気をもらう。がんば!と背中を押してもらう。工藤遥の晴れやかだが独特のオーラと、伊藤健太郎の鬱屈感…

「ストリート・オブ・ファイヤー」感想

ストリート・オブ・ファイヤー、傑作!ケンカ、ロックンロール、時々キスと爆発の94分。殴り合うけど誰も死なない、少しゆるっとしたテンポは同年公開の「ゴーストバスターズ」を思い出す。追いかけて、隠れて、逃げて、最後に向かい合う高架下。これは砂と…

「ストレンジャー・シングス」シーズン3 全話感想

ストレンジャー・シングス シーズン3、全話完走!いちばん面白かった。シーズン2が流し見だったので最初追いつくのに時間かかったが…エルとマイクの恋の行方、町に忍び寄るソ連の影…などなど常に4つぐらい話が同時進行だからホントに忙しい笑 エルとナン…

「ワンダーウォール 劇場版」感想

ワンダーウォール 劇場版、みた。今年ベスト!京大吉田寮をモデルに、築100年の自治寮を守ろうと戦う大学生の青春を描く。ああ、なんて切なくて、苦くて、青臭くて、それでいてこんなにも胸が熱くなるのだろう。対話を拒む大学当局は変質する社会の象徴であ…

「許された子どもたち」感想

許された子どもたち、傑作!いじめの末に同級生を殺してしまった少年は、母の説得に屈して容疑を否認するが…。これはもう〈見る地獄〉です。被害者遺族の会見も、ネットリンチも、加害者の一見不可解な逃避も、すべて見覚えがある。少年犯罪は〈未熟さ〉で片…

「はちどり」感想

はちどり、みた。1994年の韓国に生きる少女の物語。キム・ウニは今どんな大人になっているだろう?劇場を出て最初に思った。裕福ではない家庭で狭い団地に一家5人。尊敬する漢文の先生や仲の良かった友人を思い出して何を想うのか。でも彼女に目に映る世界が…

「水曜日が消えた」感想

水曜日が消えた、みた。面白かった!どうせテレビ局幹事のオリジナルサスペンスなんて…とタカくくってました。「スプリット」かと思いきや「ビューティー・インサイド」。事故がきっかけで7つの人格に分裂してしまった「僕」の中から「水曜日」が消えてしま…

「春を告げる町」感想

春を告げる町、みた。傑作!全町避難が解除された双葉郡広野町に帰ってきた人びとを追うドキュメンタリー。映画は「彼らが震災以前なにをしていたか」に重きを置かない。爪痕を殊更に強調することもない。そこにあるのは広野町の日常であり、折々の行事であ…

「WASPネットワーク」感想

WASPネットワーク、みた。90年代マイアミに潜伏していた反カストロ組織を追跡するキューバ人スパイたちの物語。ドキュメンタリータッチで積み上げる抑制した作り。中盤の物語の構造が明らかになる瞬間や、ミグと小型機の海上の駆け引きは見どころだが、事実…

「イエスタデイをうたって」全話感想

イエスタデイをうたって、傑作!49%うしろ向き、51%まえ向きに生きる4人の男女の青春群像。ゼロ年代の世田谷線沿線のノスタルジックな雰囲気がたまらなあ。人生の遠回りを受け容れてくれる気がする。みんなちょっとずつずるい。好意に寄りかかったり、何も…

「エジソンズ・ゲーム」感想

エジソンズ・ゲーム、みた。直流送電のエジソンと交流送電のウェイスティングハウスの確執を描く。いわゆる電流戦争だが、どちらが負けるのか未来の僕たちは結末を知っている。ディテールは知らなかったので「なるほど、そうだったんだ」となるところも多か…

「波よ聞いてくれ」全話感想

波よ聞いてくれ、全話見た。地元FM局の麻藤ディレクターにスカウトされたカレー屋の店員・鼓田ミナレの奮闘。金借りて逃げた元カレ、部屋から腐臭を放つ隣人、兄妹の喧嘩に巻き込まれる元職場などアクシデントだらけのミナレの人生はラジオそのもの。最終回…

「ドラマスペシャル スイッチ」感想

ドラマスペシャル スイッチ、みた。坂元裕二×月川翔。元恋人の検事と弁護士がとある連続暴行犯をめぐり敵同士となり…。ていねいに1枚1枚積み重ねていく連ドラに比べてエンタメに振り切っているが、いつもの坂元節も健在。コミカルな前半からツイストの効いた…

「午後8時の訪問者」感想

午後8時の訪問者、みた。傑作!ダルデンヌ兄弟にハマった。これは罪悪感をめぐる物語だ。あの時助けに応えていれば…という気持ちから町医者のジェニーは方々を訪ね、変死した女性の名前を探す。なかなかにハードボイルド。人物の移動に心情と関係性の変化を…

「くちびるに歌を」感想

くちびるに歌を、みた。東京から音楽教師として赴任したピアニスト。沸き立つ生徒だったが、彼女には暗い過去があり…。事情を抱える先生と生徒が歌をとおして絆を育む過程は〈教科書通り〉だが、やり抜くのも逆に難しいと思う。「マイバラード」が好きなので…

「サンダーロード」感想

サンダーロード、みた。母を喪い神経衰弱の男が、家族に仕事に災難に巻き込まれていく。葬式で「涙のサンダーロード」を流そうとするがラジカセが壊れてうまくいかない、踊りもおどれない。この映画は終始そんな感じだ。不安を埋めるかのようにまくし立てる…