「イエスタデイをうたって」全話感想
イエスタデイをうたって、傑作!49%うしろ向き、51%まえ向きに生きる4人の男女の青春群像。ゼロ年代の世田谷線沿線のノスタルジックな雰囲気がたまらなあ。人生の遠回りを受け容れてくれる気がする。みんなちょっとずつずるい。好意に寄りかかったり、何もかも壊したくないと欲張ったり。愛おしいよ!
ただちょっと着地は勿体なかったね。2クールでじっくり描いてもよかった。リクオは自分に嘘をつく。榀子を追いかけていた過去にとらわれているのだ。なにが大事かわからないから、なにをしたいかもわからない。榀子もまた同じである。彼らは似た者同士ゆえに、同じところをグルグル回っている。
心をぐらっと動かされるような感動はなかったのだけど、それこそ井の頭公園を散歩したり、ちょっとレトロな喫茶店でのんびりお茶を飲むような心地よさ、気持ちいい時間の流れみたいなものがこのアニメにはある。それは主演の声優陣たちの声質と演技に寄るところも大きいと思う。
リクオ演じる小林親弘の低く響く声。ずっと聴いていられる。宮本侑芽のハルはカラスを連れて歩くエキセントリックな女の子。アニメ的な可愛さの中に、体当たりしながらも葛藤するリアルな感情の揺れが表現され、愛せずにいられないキャラになっている。榀子の花澤香菜は言わずもがな。
浪を演じる花江夏樹は人気声優だけど声があまり好きではない。けど、榀子へのちょっとねじれた少年の繊細な心を余すことなくその声に込めている。しかし、憧れの人と一緒になれたはずなのに息苦しいとは…青臭い胸が痛い!最終回、ハルの目の前をとある過去のリクオとハルのカットが最高。