映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「桜桃の味」感想

桜桃の味、みた。人生に絶望し、自殺を決意した男が、その手助けをしてもらおうと道ゆく人に声をかける。博物館で働く老人が、男の自殺を止めようと説得する件りがすばらしい。あの世から見に来たいほど美しい世界なのに、あんたはあの世に行きたいのか。ロ…

「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」感想

オクトパスの神秘:海の賢者は語る、みた。精神を病み、ふるさとに帰った映画監督が、好奇心旺盛なタコに出会い、やがて「友だち」になっていく…。これはラブストーリーと言っていいかもしれない。ドキュメンタリーというのが信じがたい、驚きと発見に満ちた…

「愛してるって言っておくね」感想

愛してるって言っておくね、みた。ことしのアカデミー賞短編アニメ作品賞を獲った作品。余白の多いアニメーションだからこそ、たった12分でこの家族の十何年かの厚みが描けるのだろう。このお話とはあまり関係がないのだが、作品をみて真っ先に浮かんだのは…

「親密さ」感想

親密さ、みた。演劇を作り上げる若者たちと、実際の舞台の様子を描く。虚構に虚構を重ね、現実に現実を上書きする。スクリーンに馴染まない平凡な面立ちの演者たちがとてつもない魅力を放っている。一つひとつのセリフの精度も高く、第一部ラストの長回しは…

「別に、友達とかじゃない」感想

「別に、友達とかじゃない」をみた。小学生の頃はよく一緒に帰っていた三人。高校卒業を間近に控えた三月、ひさびさに帰り道で鉢合わせ…。レプロ企画のアイドル映画と侮ることなかれ。田んぼ以外なにもない群馬で夢を語る少女たちの「ケンカ」が、可笑しくも…

「stay」感想

stay、みた。空き家に住み着いた五人の男女と、立ち退きを求めてやってきた役所の男の物語。来るものは拒まず、去るものは追わず。名前のない関係性は心地よいが、どこかサスペンスフルでもある。なによりこの映画は「空間」が主人公だと感じる。もう一捻り…

「アップグレード」感想

アップグレード、みた。謎の組織に妻を殺され、自身も半身不随になった男が、AIチップ「STEM」により超人的な力を手に入れる。ちょうどいい塩梅のSF。テクノロジーもいまあるモノの二歩先ぐらい。ランプじゃなくて屋根が光るパトカーなんて近いうちに実現し…

「宮城発地域ドラマ ペペロンチーノ」感想

宮城発地域ドラマ「ペペロンチーノ」、すばらしかった。ことしの単発ドラマベスト!震災で店を流された小野寺が、10年の節目に「今日まで連れてきてくれた人たち」とパーティーを開く。「被災者」の肩書き、震災復興、その矢先の新型コロナの蔓延…。数々の偶…

「マ・レイニーのブラックボトム」感想

マ・レイニーのブラックボトム、みた。1920年代のシカゴ、とある録音スタジオに集まった黒人アーティストたちの物語。最初は傲慢なんだろうと思ったマ・レイニーも、中盤以降、がらりと印象が変わる。密室劇ゆえのどん詰まり感。白人との対立は「ストレイト…

「21ブリッジ」感想

21ブリッジ、みた。全面封鎖された深夜のマンハッタン、逃げまわる強盗犯、そして、彼らを追うデイビス刑事。シンプルな筋書きながら、ぐいぐい引き込まれる。銃声が重い。銃撃で人が死ぬ。その重みと惨さがしっかり伝わる。最終的にニューヨーク観光したく…

「街の上で」感想

街の上で、面白かった。今泉作品は人間がカメラ/観客を意識していない。わざとらしい名言は吐かないし、会話は微妙にズレている。ただ、そこにカメラをポンと置いて撮ったような生々しさがある。「成長」を避け、ただ存在を愛でるのだ。キャラ立ちした四人…

「パーム・スプリングス」感想

パーム・スプリングス、みた。結婚式の夜を何万回も繰り返すループにハマってしまったナイルズと、そんな彼に巻き込まれたサラの物語。この手のタイム・リープモノは結論が決まりきっているので新鮮さはないのだが、コロナ禍で丸一年退屈な日々を過ごした自…

「砕け散るところを見せてあげる」感想

砕け散るところを見せてあげる、みた。いじめられっ子の坡璃と、彼女に手を差し伸べる清澄。よくある青春恋愛映画かと思いきや、結構ヘビーなお話。だが、正直それほどハマらなかったかな〜。助演ながら清原果耶と堤真一の存在感が光る。「殺さない彼と死な…

「ザ・スイッチ」感想

ザ・スイッチ、みた。シリアルキラーと地味な女子高生が入れ替わってしまった!というワンアイデアで押し切るホラー映画。中身が女の子のヴィンス・ボーンが面白い。キュンとくる恋愛要素もあるけど、見た目はおっさんのまま。キャスリーン・ニュートンは「…

「ヒズ・ガール・フライデー」感想

ヒズ・ガール・フライデー、みた。スクリューボール・コメディの代表作。再婚を機に記者を辞めるヒルディと、彼女をジャマする未練たらたらの元夫・ウォルター。いくらC・グラントと言えどフォローできないクソっぷりだが、雪崩のように押し寄せる丁々発止の…

「ローズマリーの赤ちゃん」感想

ローズマリーの赤ちゃん、みた。いやぁ〜、面白かった!これまでみたホラー映画でいちばん好きかも。奇妙な悪夢をきっかけに妊娠したローズマリー。相次いで身に降りかかる不幸に、彼女は隣人を疑うが…。直接的な描写はないのに本当に怖い。果たして彼らは悪…

「星影のワルツ」感想

星影のワルツ、みた。NHK制作の単発ドラマ。東日本大震災の大津波で家を流され、福島沖を三日間も漂流した男性の体験を描く。妻と一緒にいたはずのに、自分だけが助かってしまった後ろめたさ。とにかく津波到来からトタン屋根に捕まるまでの流れが生々しく、…

「星とレモンの部屋」感想

星とレモンの部屋、みた。創作テレビドラマ大賞で、先日NHKで放送された単発ドラマ。母が倒れたのに助けを呼べない引き籠りのいち子と、そんな彼女とチャットでやりとりする男の物語。セリフ過多で、あまり目新しさも感じなかったのだが、終盤にかけての畳み…

「14歳の栞」感想

14歳の栞、みた。埼玉のとある中学二年生の学級を三ヶ月間追ったドキュメンタリー。35人全員を主人公にしている。クラスが好きな子もいれば、部活に打ち込む子、居場所は家にある子もいる。自分はどうだったかなあ。しかし、安易に「エモ」に誘導するような…

「僕が跳びはねる理由」感想

僕が跳びはねる理由、みた。自閉症の日本人少年によるエッセイをもとにしたドキュメンタリー。彼らがどんな世界に生きているのか。そして、なにを想っているのか。俺は自閉症を根本的に誤解していた。理解する気がなかった。観賞後、見える景色がガラリと変…

「騙し絵の牙」感想

騙し絵の牙、おもしろかった。社長の座をめぐり繰り広げられる権力ゲーム。戦場を軽やかに操る編集長・速水と、彼を見つめる部下の高野。こうやってド派手にエンタメしつつ、ちゃんと政治性や寓意を含んだ物語に仕上げるのは、邦画だと珍しいかも。終盤息切…

「ノマドランド」感想

ノマドランド、みた。知らない世界を生きてみる。そんな体験が映画を見るよろこびの一つなら、これほど映画的な映画はない。ただ働いて、メシを食い、寝る。延々と続く地平線を旅するファーンは、人に頼らない。ノマドな生き方に憧れるのではない。孤独を受…

「ハローグッバイ」感想

ハローグッバイ、みた。同じクラスでも交わることのなかった葵とはづき。ある日、迷子のおばあさんとの出会いをきっかけに、共に行動し始める…。久保田紗友と萩原みのりは「顔」でドラマやその人の歴史を語れてしまう俳優なのだと改めて気づく。もたいまさこ…