映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「騙し絵の牙」感想

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騙し絵の牙、おもしろかった。社長の座をめぐり繰り広げられる権力ゲーム。戦場を軽やかに操る編集長・速水と、彼を見つめる部下の高野。こうやってド派手にエンタメしつつ、ちゃんと政治性や寓意を含んだ物語に仕上げるのは、邦画だと珍しいかも。終盤息切れするが、なかなか楽しい映画でした。

國村隼演じる大物小説家の絶妙な俗っぽさ。俺の中では結構ツボ。佐藤浩市もああいうダーティな役が似合うし、佐野史郎のああいう気難しい常時キレ気味オヤジの演技大好き。あちゃ〜ってとこもちょっと可愛げがある。宮沢氷魚木村佳乃はイメージのままだが、求められた役をきちんとこなしている。

大泉洋は原作があてがきのせいもあってか、非常にハマっている。あの人の良い意味での摑みどころのなさが、速水という人間の胡散臭さとカリスマ性を盛り立てる。出版に対する情熱をもっと強調してくれるとキャラに深みが出たかなあ。あれだとジョーカーみたいな単なる壊し屋に見えなくもない。

あと松岡茉優。彼女が演じるキャラは観客目線に立ち、速水が引っかき回すストーリーを整えてくれる。クセ強めのキャラに囲まれ、バカバカしい権力闘争に翻弄される中、それでも自分の軸を持って仕事を続ける。高野のキャラと松岡茉優の本作における立ち振る舞いが重なって見えてくる。

引くところは引くし、押すところは押すのである。あと我が家・坪倉の芝居も良かった。中村倫也はもう「恋あた」の社長にしか見えない笑 池田エライザのキャラも本人役か?と思うぐらいハマってるが、良くも悪くも池田エライザの域を出ない。なぜ彼女はスクリーンだと急に輝きを失うんだろうな。謎。

コンゲーム的な楽しさは期待通り。いや、思っていた以上にエキサイティングだし、先読みを許さない展開で面白い。あんまりわざとらしい伏線のばら撒き方もしない。ただ、後半少し失速する。同じトーンで話は進むのに、テンションが落ちるのである。どんでん返しに免疫ができてしまったからかしら。

正直、盛り込み過ぎ?個人的にはひとつぐらい要素切り落としても良かったと思う。いまなにやってるんだっけ?って感情が振り落とされそうになったから。エピローグが長かったのはとても残念だった。ああいう着地点を見失ってしばらくさまよってしまう映画は正直好きじゃない。面白かったけども。