映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「呪怨:呪いの家」感想

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呪怨:呪いの家、みた。あとからじわじわ迫ってくる怖さ!振り返ってみれば平成初期は猟奇的殺人事件の続く〈呪いの時代〉だった。実在の事件をモデルにしているがすべて被害者は女性。父なる者への嫌悪も見え隠れする。シンプルだけど人間って何しでかすかわからないっていう禍々しさ、これに尽きる!

ただ俺が三宅唱に感じていた魅力は残念ながらこのドラマにはなかったかな。人と人のあいだに流れる時間の心地よさ。これはホラーではやっぱり難しい。特に今回は断片的なエピソードをつなぐ構成だし。あの家の間取りも活かせているような活かせていないような…。終盤のザク切りの編集は好き。

レイプシーンや女性の性の扱いが見世物的であるという批判は正直難しいところ。俺はそういう意図では捉えなかったし、見る人によるのではと思うが、女性キャストがハマりきっていないのはたしか。荒川良々井之脇海柄本時生などはよかったが。妊婦役はもっと〈普通の人〉の方が生々しかっただろう。

こないだ「ワンダーウォール  劇場版」のパンフレットで渡辺あやが主演キャスト陣を「とても色気のある演技だ。何を考えているのかもっと知りたくなる」と評していて、三宅作品の面白さもここだったよなと。1話30分の短尺のせいか語り部の小田島=荒川良々以外のキャラが見えにくい。これは残念。

ネタバレになるので列挙は控えるが平成史に血生臭い傷を残した猟奇的事件の数々が本作のモデルになっている。しかし記憶がまだまだ新鮮なこれらの事件にたいし、まだ僕ら観客は距離の取り方を掴みきれていないのではないか。エンタメとして〈全世界同時配信〉するにはまだはやい可能性はある。

ホラー映画の中ではたくさん突拍子も無いことが起こる。しかしそれは〈呪い〉の力で片付けられる。一方、現実は違う。人間は誰かに操られるでもなく自分の意思で女性を手篭めにしたり、残酷なやり方で殺害したりする。他人はみんな薄っすら気味が悪い。突然あなたを刺したりするかもしれない。恐怖。

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現実の事件を扱うことで、人間の根っこにある狂気を掘り下げていく。その手法が安易だという批判もあるかもしれないが、すごく効果的ではあると思う。だって映画では〈呪い〉で片付けられてる出来事が、本当にこの日本で起きてるんだから。それを〈呪い〉で説明するんですか?と。

後からじわじわくるって言ったのは、毎回見終わった後モデルになった事件を調べる過程で湧き上がってくるものだから。それってドラマじゃなくて事件が怖いんじゃね?って言われちゃうかもだけど。あの禍々しい〈呪い〉が作り手の悪趣味でもなんでもなくて本物の人間が真面目にやったことなんだと。

だからやっぱりそれを楽しんじゃうのは違うんじゃないかなって葛藤も当然自分の中にはあります。アイドルを追いかけつつアイドルカルチャーってどうなのかなと自問自答することにも似ている。でも俺、基本的にゴシップとかスキャンダル好きなんですよね。本当にしょうもないんだけどさ。