映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「鳥」感想

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ヒッチコックの「鳥」をみた。大傑作。ホラー映画を見ても怖いとは思わない方だけど、これは本気で震えました。ド派手なスプラッターより、生爪剥がされたり、急所蹴り上げられたりする場面の方が痛みを感じるのと同じ。けたたましい鳥の泣き声が恐怖を煽るBGMになる。黙示録的なラストカットは白眉。

ヒッチコックの「鳥」をみた。大傑作。ホラー映画を見ても怖いとは思わない方だけど、これは本気で震えました。ド派手なスプラッターより、生爪剥がされたり、急所蹴り上げられたりする場面の方が痛みを感じるのと同じ。けたたましい鳥の泣き声が恐怖を煽るBGMになる。黙示録的なラストカットは白眉。

おびただしいムクドリが子どもたちを襲う中盤の山場。これどうやって撮ってるの?と思った。合成技術の拙さと違和感が、かえって鳥たちを「異形」の物体のように見せてくれる。煙突から家の中に鳥の群れがなだれ込んでくる様は、床でアリの行列を見つけたときみたいな気持ち悪さがあった。

これはもうムクドリ側からクレームがあってもおかしくない。それぐらいトラウマを生む映画だ。中学の同級生で、視界に入るたびに悲鳴をあげるぐらい鳥が嫌いで仕方ない子がいたけど、彼にこの映画を見せたりどうなるだろうか。たぶん失神すると思う。ふつうの人でも、鳥を嫌いになりかねない笑

クライマックスの篭城戦。あえて鳥の大群を映さない、音だけ聞かせて、恐怖を煽る演出のいやらしさ。そして、最後の畳み掛け。襲われるメラニー(なんで自分から誘い込まれてるんだとは思ったが笑)、夜が明けて外に出たときの、絶望的な光景。この緩急の使い方よ。コミカルな冒頭との落差がすごい。

鳥の大群が街を襲う手前。ダイナーで住人たちが学校襲撃のうわさをしながら、メラニーたちの話に耳を傾ける。あちゃー、このあとメチャクチャになる前振りじゃん…と思ったら、想像以上にすごいことになる。ピタゴラスイッチ的に混乱が増大していく様はちょっと面白いが、これぞパニック映画!だった。

鳥の出現前、メラニーがミッチの家を探しに、サンフランシスコからやってくる。しかし、なかなか彼が見つからない。ここまで30分近く。正直ちょっとまどろっこしいと思ったが、振り返ってみると、街のマップの説明になっているし、彼女がどんどん「奥」に入り、もう逃げられないことを予感させていた。

理由もなく人間を襲う鳥たちの姿に、おのおのが好きなように寓意を読み取ることは可能だろう。俺はやっぱり「鳥カゴの中の女性」というイメージがよぎるけれど、これはどのホラー映画にも言えたことかもしれない。とにかく、鳥が嫌いになる映画です。大満足。