映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「午後8時の訪問者」感想

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午後8時の訪問者、みた。傑作!ダルデンヌ兄弟にハマった。これは罪悪感をめぐる物語だ。あの時助けに応えていれば…という気持ちから町医者のジェニーは方々を訪ね、変死した女性の名前を探す。なかなかにハードボイルド。人物の移動に心情と関係性の変化を描くその演出手腕に唸ってしまった。

クルマの移動シーンが多い。ジェニーはハンドルを握りながら患者の電話に答える。なんて事はないのだが、いかにもな町医者の日常にグッと引き込まれる。診療所で寝泊まりし、毎日の往診を繰り返す彼女の姿を観察するだけでも楽しい。一方で事件の真相をめぐる〈捜査〉もまたエキサイティング。

行く先々で嫌がられる笑 ハードボイルドと言ったけど、ジェニーは顔に出さない人なので、少々ぶっきらぼうな印象を与える。それが罪悪感を抱える人には刺激になるのである。胃痛のブライアンに、トレーラーの老人の息子、被害者の関係者のチンピラ。見透かされ、非難されているようで、怒ってしまう。

全場面おもしろいんだけど、特にお気に入りはブライアンの部屋での時点。ジェニーの質問に答えず、スマホのゲームに熱中しながら、あっちを向いたりこっちを向いたり、目を合わせずに姿勢を変える。この交わらなさ!ワンカットに収めるのが良い。ぴたっと人物に寄り付くカメラの動きも心地よい。好き。

罪悪感を抱えた人間は、その受け止めたくない事実にどうリアクションするのか。その観点で見るとよりおもしろいんと思うんですよねえ。もっと他の作品見なくては。