映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「フォードvsフェラーリ」感想

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フォードvsフェラーリ、大傑作!ル・マン耐久レースで絶対王者フェラーリに挑むフォードの男たちの戦いを描く。全力でマシンに向き合う現場と巨大組織の論理で動くスーツ組の対立、マイルズとシェルビーの信頼関係、そんな夫の情熱を信じる妻と息子…。みんなの想いを乗せて荒々しく走るGT40に惚れる。

風を切って走るGT40。タイヤが路面に吸い付き、全身にかかる重力が7000回転の威力を物語る。コックピットのフロントガラスから覗いているかのように低空を走るカメラ、外れそうなぐらい高速で転がるホイール、轟々と音を立てて回るエンジン…たしかに焦げたゴムと油の臭いが劇場を満たしてた。臨場感!

行け!行け!って叫びたくなりましたよ。冒頭のプレゼンでアイアコッカが語っていたが、やはり戦いは人々の胸を熱くする。追い抜き、追いつかれ、持ちうるすべての知識と勘を総動員させ、マシンと対話しながら駆け引きを仕掛ける。コックピットの中は孤独だが、たくさんの仲間の力があって走っている。

レースにはそういう〈対話〉が溢れている。騒々しいエンジン音の裏で、たくさんの人々の声が行き交っている。レーサーとマシン、ピットのメンバーとマシン、レーサーとマシン、ライバルのレーサー同士、そしてマイルズとシェルビー、ピーター、モリー。僕らの胸を熱くするのはそんな無言の会話なのだ。

現場の〈対話〉に耳を傾けない、その声が聞こえていないのは、スーツ組の面々だ。澄ました顔で関係者席から眺めているだけではわからない世界があることを、観客の僕たちは知っている。フォード二世が実車に乗る場面は痛快だった。