映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ジャズ大名」感想

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ジャズ大名、みた。なんだこれ!楽器抱えて流れ着いた黒人たちが、維新の風に追い詰められた大名とジャズセッションを繰り広げる。後半30分の狂騒が凄まじい。音楽さえあればええじゃないか!といわんばかり。汗のにおいこもる熱気の背景に見え隠れする血なまぐさい闘争。楽しさの中にざわつきがある。

時折インサートされる字幕の演出。この笑いのセンスは正直よくわからない。終盤、もはや時空もしっちゃかめっちゃかになり、高速道路やら、チャルメラを吹くタモリが出てきて、もう大混乱。自分は何を見せられているんだという気持ちに。ただ、カオスではあるがなんとなく上品さも感じた。

「赤線地帯」感想

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赤線地帯、みた。傑作。売春防止法に揺れる「夢の里」の女たちを描く。お金のために体を売る。男は身勝手で頼りない。けど、一度家庭に入ってしまったら、もう仕事なんてない。これしか生きるすべがないのだ。そんな中でもひとり狡猾に立ち回り、若さと美しさを武器に男たちを踏み台にしていくやすみが痛快。

「ぼくとアールと彼女のさよなら」感想

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ぼくとアールと彼女のさよなら、みた。グレッグは親に同級生の白血病の女の子の話し相手になることを命じられ…。こじらせ映画オタクの青春。ひねくれた世界観に笑い、すれちがう優しさに涙する。病室で映画を見るレイチェルの目に、ぎゅっと胸を締め付けられた。あの時、彼女は何を想ったのだろう。

グレッグとレイチェルの会話が微笑ましいよね。彼は自己肯定感が低くて、すこし皮肉っぽく世界を見ているけど、それがとってもおかしくて愛おしい。チープなパロディ映画も。だからこそレイチェルのために作る映画のまっすぐさ、絵本のようなピュアさに胸を打たれる。そしてそれを見るレイチェルの目!

もう無理だと諦めてしまった彼女が、あの映画を見て、いったい何を想うのだろう。さまざまな思い出や気持ちが巡っただろう。ケンカ別れみたいに終わってしまったグレッグとの関係のことは。映画を見る映画。とっても映画的だった。

「特捜部Q キジ殺し」感想

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特捜部Q キジ殺し、みた。カールとアサドが20年前の双子殺害事件を追う。前回にも増して陰惨かつ猟奇的。罪をつぐなうこと、因果の連鎖から抜け出すこと。真相にたどり着いても誰も幸せになれない。禍々しい炎が強烈に目に焼き付いている。ただ、二人の関係性の深まりをもっと描いてほしかったかな〜。

「特捜部Q 檻の中の女」感想

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特捜部Q 檻の中の女、みた。傑作!デンマーク版「相棒」の趣。特に初期のイメージに近い。窓際部署の二人が未解決事件に挑む。それぞれが心に傷を負っている。どうしようもない不幸の連鎖の果てに差す希望の光。ただ事件を解決するだけでなく「救い」があるのがすばらしい。小品ながら硬派で濃密!

「ブギーナイツ」感想

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ブギーナイツ、みた。70年代ポルノ業界の光と影を描く。初々しく生意気なM・ウォルバーグが最高。PTA作品は調子に乗った人間がとにかく痛い目にあうから好き。ジョン・C・ライリーにF・シーモア・ホフマン、ウィリアム・H・メイシーなど一癖も二癖もある脇役たちも楽しい。最後モザイクはダメでしょ!

「五億円のじんせい」感想(ツイッターより再掲)

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五億円のじんせい、みた。募金によって救われた人生に重荷を感じた望来は「旅」にでる。感動の消費、善意は絶対という空気…現代社会に批判の目を向けつつ、それでも温かく、しあわせな気持ちになれるのは、この世界はまだやさしさにあふれていると思えるから。望月歩のピュアな輝きに支えられた作品。

とにかく「迷惑」をかけることを極端に嫌う日本人。優しくされると、その分だけ恩返しをしなくちゃいけない。地域の人々に支えられ、みんなの期待に応えるように生きてきた望来。そんな彼も思春期にさしかかり、自分の生きる意味を考える。この息苦しさは映画の中だけにあるものではない。

自分の命の値段は5億円なのか?それに見合うだけの価値を示せなければ、みんなが自分を生かそうとした努力は無駄なのか?生まれた時に借りた莫大な「借金」を返すのが自分の人生なのか?だからじぶんが「望来ちゃん」じゃない世界へ旅立つ。まっすぐに育った彼にとって社会はそれほど優しくなかった。

嘘つきに騙されることもある、犯罪に巻き込まれることも。けど、世の中に「善人」と「悪人」の2パターンの人間がいるわけでない。裏社会の人間が優しく手を差し伸べてくれる。ずっと嫌われていたのに、ふと心が通じ合う瞬間がある。世界は思ったより広くて、自分が生きる意味は、自分で見つけられる。

「死んだら美化される」かもしれない。けど、他人によく評価されることが、そして期待に応えて褒められることが、人生の目的なんだろうか。もっと自由に生きていいんじゃないか。自分は望来みたいな純粋さもまっすぐさもない。「優しくしてくれることで生き残れるタイプ」ではないけど、勇気がわく。