「アメリカン・ミーム」感想
アメリカン・ミーム、傑作!一世を風靡したインフルエンサーたちの〈その後〉を追う。自分で作ったキャラクターに飲まれていく。飽きたら捨てられる商品として消費される日々。華々しい表の世界からは想像できない裏の顔。〈パーティ盛り上げ役〉のキリルがボロボロになっていく様が悲惨だった。
自分で作ったスパイラルから抜け出せない。バインのサービス終了で一気に〈終わった人〉になってしまったブリタニーのエピソードは恐怖。職業・有名人の元祖的なパリス・ヒルトンの苦悩もなかなかエグい。セックステープの流出やホラー映画の宣伝など食い物にしようとする周囲の人間が醜悪だ。
けど、彼女の最後の目論見は、やっぱりこの人はパリス・ヒルトンなのだと思った。分身がいたらそいつに中国でも行ってもらって私はお家でゆっくり過ごしたい、的なことを言っていたが、それを本当に実行しようとしている。インフルエンサーの次は分身の世界なのだろうか。興味深かった。
フェイクニュース流してフォロワー騙しまくったり、平然とパクリを繰り返すファット・ジューには、キリルやブリタニーのような苦悩がない。これは金儲けの手段であり、群がる人間は養分なんだと言いたげな図太さ。インフルエンサーとしての賞味期限も自覚して手堅くビジネスを展開する。
彼の成功がこの先約束されているわけではないけど、これぐらいの無神経さがないと資本主義社会における〈使う側〉にはなれないんだろうなと思った。やっぱりこの仕組み自体に向き不向きってあるよって、こないだオードリー若林の「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」の話を思い出したり。