映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「G線上のあなたと私」全話感想

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G線上のあなたと私、全話完走した。すごく優しいドラマでした。今さら何者になろうというわけでもない、大人たちの音楽教室。彼らには普段の生活がある。テストの前は忙しいし、家族のお世話に付きっきりの時もある。それでもみんなでカラオケルームに集まって練習する。これが生きるってことなんだ!

バイオリン習っても、べつにプロになる必要なんてなくない?上手くなろうって心意気は大事だけどね、というスタンスを貫いた作品だった。「なりたい自分」や「理想的な未来」を追いかけるのは大事だけど、そればかりやってると疲れちゃう。現実とのギャップに傷つくし、他人と比較もしたくなる。

そうじゃなくて、ほどよく肩の力を抜いて、今やりたいこと、心地よいこと、本当にすきな何かに身を委ねてもいいじゃないか。一度脱線してしまった〈レール〉に戻れない自分を責め、叶わぬ恋に酔いしれ、完ぺきなお母さんを演じる。満員電車に無理やり乗り込むように、自分を型に詰め込む人生は苦しい。

このドラマは「G線上のアリア」に新しい色を加えてくれた。街中でこの曲を耳にするたび、泣きじゃくる也映子の顔や、カラオケボックス海老名駅前の歩道橋が目に浮かぶ。三銃士が先生の前で披露した「G線上のアリア」には失恋の思い出や離れていても側にいると感じられた瞬間の高揚感が詰まってる。

第1話の冒頭、也映子は絶望的な告白をされ放心状態で歩き回った末に「G線上のアリア」を耳にする。3人の旅はあそこから始まった。ぎこちない、耳にさわるようなバイオリオンの音色がなぜか心地よかった。あの3人なら「アリア」は特別な曲だと答えるだろう。俺にとってもそう。一緒に泣き笑った気分。

ちょくちょく也映子がめんどくさかったり、ところどころ展開に弛みはあったのだけど、ひと肌恋しいこの季節、家に帰ってコタツでのんびり見るにちょうどいい温かさのドラマだったと思う。すきな作品でした。