映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」感想

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ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯、みた。大傑作!かつて友人同士だったならず者と保安官。カッコいい散り様も英雄的な活躍もない、決闘に挑み無残に死んでいく男たちのバラード。みんないずれ殺されると覚悟を決めたような目つき。死期を悟った老保安官が夕陽を見つめる「天国の扉」の場面は珠玉。

これ、タイトル詐欺だよね。主役ギャレットじゃん。彼とビリーの微妙な距離感。自由を求める無法者と安定に落ち着きたい保安官。執念で追いかけながらも、積極的に殺したいとは思っていない。だって、ビリーの居場所を突き止めても娼婦としけこむところに押し入ることはせず、外のベンチで待つんだよ。

殺した後も夜が明けるまでそばにいる。離れられないんですね。そして石を投げられながら振り返ることなく去っていく。失われた友情への後悔とか未練とは違った、もっとずっしり重い何かがギャレットの胸の中には渦巻いていたと思う。殺さなければ自分が殺される。無情な世界。

ボブ・ディランの音楽が作品を彩る。特に「天国の扉」はすばらしい。沈みかけの夕陽に照らされた老保安官の妻の頬を伝う涙!なんて切なく美しいのだろう。あそこに開拓期アメリカの厳しさとか、命が簡単に奪われてしまう呆気なさとか、すべてが詰まっていたと思います。