映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」感想

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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ、みた。大傑作!忘れられていたキューバ音楽の古老を再発掘した同名アルバムのドキュメンタリー。カーネギーホールの舞台の上で万雷の拍手を浴びるイブラヒム・フェレールの表情!本作はこの瞬間の彼を捉えるために存在したのだ。それは圧倒的な人生への肯定!

かつては有名なシンガーだったけれど、人生に失望し、歌うことすら飽きてしまっていたフェレール。「この体に血が流れている限り、女性を愛すよ」と笑顔で語るセグンド。バレエ教室でたのしそうに子どもたちにピアノを弾くルビン。歩んできた道はそれぞれだが、みな生活の中に音楽があった。

60年代のクラシックカーが現役で活躍するハバナの町並み。そこで生み出される音楽には人生の悲哀と歓びと生活の匂いがたっぷり染み込んでいる。それでいて大人の色気を感じさせるセクシーな歌詞とリズム。彼らのシワとシミの数だけ物語があるのではないか。そう思いたくなってしまった。

テレビを点ければ暗いニュースばかり、家に引きこもって不安な日々だけど、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの音楽を聴いている間は自由な気分になって、すごく救われた気がした。人生の喜びも悲しみも味わい尽くした彼らの音楽に、まあなんとかなるぜと背中を押された気持ち。

物語性はなく、最後に彼らがカーネギーホールでのコンサートまで行ったことが語られるが、基本的にはイブラヒム・フェレールたちの過去と音楽を作っていく過程が捉えられている。しかしそれがまた飽きないのである。彼らの音楽が流れているだけでうっとりしてしまうが、カメラの動きも自由で良かった。