映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「生きのびるために/ブレッドウィナー」感想

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生きのびるために/ブレッドウィナー、みた。タリバン政権下のアフガニスタンで〈男〉として生きのびる少女を描く。女というだけで自由に出歩くこともできない、途方もない不安と息苦しさの中で、それでも物語に縋り、ことばを紡いで希望を手繰り寄せていく。こんな世界があるのかと改めて絶望。傑作!

女でいる限り男に頼らないと買い物すらできない。だから少女は長い髪を切り、男として暮らす。パヴァーナは男のフリをして初めて自由を知る。これはアフガニスタンだけの話ではない。形は違えどこの日本でも起こっていることだ。頭で理解はしていても、改めてこうやって突きつけられると絶望する。

自分が自分であることを捨てた方がマシなんてことあってはならないはずだ。そんな人生に希望なんてあるのだろうかとすら思う。でも、人間にはことばがある。何千何万年と前から受け継いできた物語がある。ひとが世界とつながるヒントはそこにあるはず。俺もまたこの映画を通じて世界とつながっている。

アフガニスタンの風俗をアニメーションで描いている。これだけでかなり面白いし新鮮。パヴァーナたちの暮らす家や町並みは戦争で疲弊し寂れている。一方、市場の活気や服飾の鮮やかさには、古代から連綿と続く人びとの生活のエネルギーを感じる。また、彼女の語る物語の世界はカラフルで美しい。