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「レゴ・ムービー2」感想:父との和解の「その後」

こんにちは。じゅぺです。

今回は「レゴ・ムービー2」の感想です。

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「レゴ・ムービー2」は人気玩具レゴ・ブロックを題材にした傑作アニメ「レゴ・ムービー」の続編です。前作に引き続きフィル・ロードクリストファー・ミラーのコンビが製作と脚本を担当、監督はシュレック フォーエバー」のマイク・ミッチェルが務めました。

 

秩序と自由、お父さんと息子

「レゴ・ムービー」はオモチャを題材にしたファミリー向けの映画ながらも、その高密度な脚本と卓越した映像演出で批評的にも大きな成功を収めました。「レゴ・ムービー」では、平凡な主人公エメットが「マスタービルダー」たちの力を借りながら、世界をスパボン(=ボンド)で接着することで「秩序」をもたらそうとするお仕事大王に立ち向かう姿が描かれました。

さらに終盤以降、この物語そのものが、エメット少年の空想の世界であったことが明かされます。お仕事大王の正体は「完璧なコレクション」を目指し、子どもが遊べないようにすべてのブロックを接着しようとするお父さんであり、息子のエメットはその暴挙を阻止しようと、想像力/創造力で立ち向かっていたんですね。つまり物語は多層構造になっていて、秩序 vs 自由、マニュアル通りのレゴ vs アイデアで組み立てるレゴ、父 vs 息子といった様々なレイヤーが折り重なってダイナミックな全体像を作り出しているのです。

しかし、この映画はどちらかを否定するようなことはせず、どちらも肯定します。示されるゴールは両者の「和解」です。マニュアルがなければそもそも新たなアイデアは生まれない、秩序やルールがあって初めて「逸脱」が認識されるのであり、自由の本質は制約への反抗にあるのだということ。これはまさしく「レゴ」というオモチャの楽しみ方の根幹にある哲学です。武道の「守破離」に近いものがあるかもしれません。親子の関係修復、抑圧の危機にある世界の救済、そして「レゴ」の楽しさを、同じ構造に落とし込んで語ってしまうクレバーさに、僕は大きな衝撃を受けました。「レゴ・ムービー」は間違いなくオールタイムベストの一本です。

 

父との和解の「その後」

前作で父と和解したエメットが次に向き合うのは妹です。父が子どもたちにレゴ部屋を解放した結果、エメットの世界はデュプロ星人=妹による侵略を受けることになります。「すべては最高」だったはずの世界は、絶望的な混沌へと飲み込まれていくのです。もうすでに多層構造のネタは周知のものですから、第2作ではさらにツイストを効かせた展開が待っています。よりエメットの自我に深く切り込んだ内容になっているのです。

「セカンド・パート」の中盤以降に描かれるのは、妹の介入によってただ無邪気に遊んでいるだけではいられなくなった=世界を救うヒーローではいられなくなったエメットの混乱、怒りや不満です。彼は「兄」として現実に向かい合わなければなりません。わがままな「子ども」の殻を壊さなければならないという、外からの圧力に戸惑うことになるわけです。この葛藤は、レゴの世界では想いを寄せるワイルドガールの失望となって現れています。大人になること、兄らしくあること、そして「男」として一人前になること。さまざまな不安にかき乱されながら、エメットは「ワイルド」になろうとし、やがて世界を破滅に導いてしまいます。

そして、エメットは自らの過ちに気づくのです。彼は心地よい世界が壊されていく焦りから、本当の自分を見失ってしまっていたんですね。これは現実パートともリンクしていて、レゴをめぐり争う兄と妹の和解の物語がオーバーラップしていくことになります。自分だけがハッピーで心地よく居られる「すべては最高」な世界なんて現実に存在しません。それがたとえ少年の脳内で組み上げられた妄想の空間であってもです。「すべては最高じゃない。だけど、最高に近づけることはできる」ことに気づいて初めて、世界はよりベターな方向に進んでいくのです。それって、昨今の混乱を固める世界情勢、ポストトゥルースのトランプ時代へのカウンターにもなっています。本当の自分を見失わず、みんなにとってのベストは何なのかを常に探し続けることこそが「すべては最高」への第一歩なのです。

 

全体を通して

「レゴ」という語り口と「型にハマった大人と自由な子ども」の対立というテーマがカッチリ噛み合う気持ち良さが前作にはありましたが、セカンドパートではメタ目線をより生かした物語になっていました。おかげでレゴを組み立てる気持ちよさや、ならではの独創性はちょっと薄めに、より抽象的な話になっている印象です。

小ネタは前回以上にディープで細かく、子どもにわからせる気ないでしょって笑いもちらほらありました笑 ただ、映像面の話をすると、前半は1作目と変わりし映えしなくて少し辛いです。「レゴならでは」の驚きや柔軟さには欠けています。重層的な脚本のクレバーさは相変わらずですが、クリエイティビティあふれるアクションの喜びが足りない分、大人が考えた頭でっかち感が強調されてしまっていると思いました。

最後になりますが、エンドクレジットは傑作でした。良くも悪くも気合い入りすぎです笑 こういうお遊びをオシャレに見せてしまうのが憎いですよねえ。フィル・ロードクリストファー・ミラーの偉大さを改めて実感しました。