映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ラ・ポワント・クールト」感想

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ラ・ポワント・クールト、観た。アニエス・ヴァルダはいまの俺と同じ26歳のときに故郷でこの映画を撮ったらしい。ヌーヴェル・ヴァーグの先駆け。ベルイマンにも影響を与えたらしい。勿体つけた会話劇はともかく、映っちゃいけないものが見えそうな不穏さが漂う、才気走った映像美だけで観る価値あり!

この手のフランス映画を観ると、この訳はニュアンス拾い切れてるのか?って思うことが多々あり。意味ありげなことばの羅列をただ拾い切れていない、俺の読解力に難があるのかもしれないけど、それにしてもその無機質な会話劇をどう受け取れば?と。邦画だとなかなかこうはならないですからね。

タイトルロールからのファーストカット。真っ白のシーツが軒先に掛けられたラ・ポワント・クールトの通りを抜けるカメラ。人っ子一人いない。そのあともカメラは漁村の景色を舐めるように映していく。部屋でほったらかしにされた子ども。談笑する主婦たち。素人くさい演者のドキュメンタリー的質感。

バカンス先(と言っても夫の故郷なのだが)で別れ話をする夫婦。ひたすら歩いて、歩いて、愛について語り合う。たびたび引用される、ツイートの画像のビジュアル。ふたりの顔は重なり、同時にズレている。若さは枯れ情熱も醒めたが、愛は残っている。ベッドで並ぶふたりの影が不気味。まるで棺だ。

一方、惹かれ合うものの、なかなか上手くいかない若い男女も登場する。男は刑務所へ連行され、女は親の許しを得られない。しかし、最後、男は水上槍合戦(南仏の名物らしいが、初めて知った。まあまあ危なそう)で戦果を上げて、女と結ばれる。恋の火が失われた後の夫婦との鮮烈な対比になっている。

伏流するストーリーとして、水質汚染を理由に漁業の許可を得られず、村ぐるみで違法に魚や貝を採る人たちの戦いも描かれる。ぐだぐだと先が見えない二組の愛の行方と重なった。幾重にも分かれる線路(シンエヴァの第三村みたい)や猫の死体、造船用の空洞(これはナウシカを想起)。どれも不穏。

伏流するストーリーとして、水質汚染を理由に漁業の許可を得られず、村ぐるみで違法に魚や貝を採る人たちの戦いも描かれる。ぐだぐだと先が見えない二組の愛の行方と重なった。幾重にも分かれる線路(シンエヴァの第三村みたい)や猫の死体、造船用の空洞(これはナウシカを想起)。どれも不穏。