映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「スープとイデオロギー」感想

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スープとイデオロギー、観た。在日コリアン2世の監督が、済州島の虐殺事件を生き抜いた母の過去を探るドキュメンタリー。徐々にアルツハイマーに飲まれていく母。饒舌だった彼女がどんどん「穏やか」になっていく。比例するように明かされるあまりに酷い真実。スープの味と共に受け継がれる。良作。

在日コリアンの家庭での会話。ハリウッド映画でよく移民家族が、英語とルーツの国の言葉を織り交ぜて語るのを見て、「そんなややこしいことする?」と思ってたけど、みんな本当にそうなんですね。夕飯の席、日本語で喋ったあとに「さあ、食べて」だけハングル、みたいな。新鮮かつ生々しい。

ヤン・ヨンヒ監督の夫が良いキャラしてますね。序盤、やたらとミッキーのシャツを着ている。やめたと思ったら、こんどはサングラス。ちょっと面白い。監督の向けるカメラと、それをつなぐ編集に愛を感じる。ほとんど映らない、夫婦としてふたりだけの時間すら、観客が想像したくなるような。

この映画の主人公とも言える、監督の母もまた、多面的な表情を見せる。おしゃべりで世話焼きな「大阪のおばちゃん」でありながら、キム一家の体制を信奉し、物騒な北の歌をうたい、息子たちを北朝鮮に送ってしまった。俺は日本を知っているようでいて知らなかった。在日コリアンの世界。