映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」感想

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映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ、みた。漠然とした不安と死の匂いを感じながら生きる。絶望は終わらない。なんとなく続く「嫌な予感」。東京の「今」に暮らす人びとの空気感を捉えた作品。主演の二人もいいが、田中哲司の不器用な歩き方がなんだか泣けてしまった。とりあえず死ぬまで生きよう。

アルタ前の交差点に、新宿南口、そして宮下公園。うす汚なくて、田舎臭い東京の一面。見せ方がだいぶ違うとはいえ、新海作品を思い出した。きょうも世界のどこかで誰かが死んでいる。自分も捨て犬みたいに、誰からも目を向けられず、そこらへんでのたれ死ぬんだろうか。都会の孤独感、息苦しさ。

「女は二度生まれる」感想

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女は二度生まれる、みた。傑作。廃れ行く花柳界に生きる小えんは筒井の二号になることを決意し…。さまざまな男と出会い、それぞれにちがう顔を見せる小えんの奔放さ!若尾文子の色気にやられる。舌ったらずなしゃべり方に残る少女っぽさもいい。背景には戦争と死の匂い。あのラストをどう捉えよう。

無知で、特に芸もなく、その時をのらりくらりと生きてきた小えん。彼女にとっての幸せはなんだろう。筒井の二号となることで、一度は目標を持ち、芸者からも身を洗った小えんだったが、筒井を失い、ふたたび宙ぶらりんになる。男たちが離れていく。ひとりベンチに座る姿にざわつきを覚える。

彼女は空襲で両親を失っている。親戚の家を経て、九段下の料亭にやってきた。もともとそういう人生なのかもしれない。ふらふらとゆれる彼女に寄り添うように、物語は手軽なスケッチのように進む。

「宮本から君へ」感想

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宮本から君へ、みた。傑作。泥臭くて、ダサくて、プライドが高くてとにかくめんどくさい男。最後まで負け続き。もがいて暴れて苦しんで、虚しさと共に噛みしめる戦いの結果の味。俺、ここまで自分の人生に真剣になったり、必死になったりしたことないなあ。最近考えることと重なり思うところがあった。

凡人として、ここまで愚直に己の無力感に向き合うということは、自分に正直にならないとできない。これ見ると大きな声出したくなるのはわかる。いないはずの熱血漢が心の中で叫び始めるのだ。大人はみんな等しくダサい。少し開き直るか。

「特捜部Q Pからのメッセージ」感想

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特捜部Q Pからのメッセージ、みた。超絶大傑作!海辺に流れ着いた「助けて」の手紙。送り主のPはすでに死亡していて…。猟奇的かつ陰鬱な雰囲気はパワーアップ。シリーズを通して描かれる罪深き人間たちの因果と救いに加え、本作では「信仰」がカギに。犯人が潜む船小屋のビジュアルに思わず鳥肌!

いつもあと一歩のところで取り逃がしてしまう。もどかしい。彼らの失敗がさらなる悲惨な結果を招く。毎度このシリーズはとても重いが、「Pからのメッセージ」は特に悲惨。 傷つき、傷つけられの連鎖。善なるものを信じられるか。見ているこちらも揺さぶられてしまう。

「ペット2」感想

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ペット2、みた。飼い主の目を盗んでニューヨークを大冒険するマックスたち。今回も安定のドタバタコメディ。ただ新キャラの魅力が薄く、子ども向け色が強いように感じた。マックスたちの子どもへのまなざしが親のようにも、兄のようにも見えて、とても愛おしかった。あとは毒っ気がもう少しあれば…。

「ANIMA」感想

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ANIMA、みた。トム・ヨーク×ポール・トーマス・アンダーソン。社会に取り込まれることへの抵抗、色彩のない景色でひとり輝く女性との出会い、そして突然訪れる終わりの儚さ。これは孤独との戦いだと思う。浮遊するようなコンテンポラリーダンスの動きは夢のまどろみだ。15分と短尺ながら贅沢な時間。

「無法松の一生」感想

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無法松の一生、みた。荒くれ者の人力車夫を勝新太郎が演じる。すこし喧嘩っ早いけど義理堅くて茶目っ気のある男。ひそかによし子に想いを寄せつづけるピュアさ。「ワシの心は汚ねえ」って。松五郎は最後までそういう人だったのだ。祇園太鼓の躍動!肉付きのいい背中と弾ける汗がかっこいい。

なかなか印象深い場面が多い。警察官に喧嘩売ったり、劇場でニンニク鍋したり。運動会?で張り切って走るところも可愛い。白眉はやはりクライマックスの祇園太鼓。松五郎からよし子への想いは、最下層から上流階級、ロミオとジュリエット的な身分差愛(といっても片思い)でもある。

神輿の上で聴衆の耳目を一手に集める松五郎。どんどん離れていく敏雄との距離が、心理的/物理的に表現されている。白髪混じりになった彼が輝くのを見て、もうそんな若くないのに、って思ったり。最高に泥くさい。