映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「その手に触れるまで」感想

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その手に触れるまで、みた。ジハード主義に染まったアメッドは、恩師の殺害を企てて少年院に送られるが…。初デンヌだけど、めちゃくちゃ好み。ぴったりとアメッドに寄り添う手持ちカメラが、導師を盲信し、トラックを全力で走り、キスの誘いに微笑む彼の心の揺らぎを生々しく映す。大傑作!

若さゆえの純粋さと反抗心。大人が何かを言うたびに少年はどんどん意固地になっていく。子どもは大人の言うことなんて基本的に聞かないものである。壁を作ってしまった彼には、母の温もりも、ルイーズの恋心も響かない。一度凝り固まった心と思考がふたたび優しさを取り戻すことはあるのだろうか?

カットは細かく割らず、同じ空間の中で変化する関係性と心情をじっくりサスペンスフルに描く。少年が洗面所に立つだけで時間の予感がする。トラックを走り回るだけで不穏な空気が漂う。しかし、少年の視野の狭さが笑いに変わるときもある。歯ブラシの使い方はそうじゃないだろう笑 省略の編集も好き。

少年院の運動場の長回しや農場でのアメッドとルイーズの初々しいやり取りなんかめちゃくちゃいいよね。ふたりの会話を中心にしながら、後ろにいろんな人が動いていたり、常に絵に変化があるから単調にならない。一つひとつのカメラの動きに注目してしまった。さっき見た映画が緩かっただけになおさら。