「フェアプレー」感想
フェアプレー、みた。EUフィルムデーズ2021にて。社会主義体制下のチェコスロヴァキアを舞台に、オリンピックの夢とドーピングの圧力でゆれる若きスプリンターを描く。貧しい国で国家の看板を背負うということ。当時のアスリートの葛藤を想う。しかし、それでも「自由」であろうとする主人公は逞しい。
かつてテニスの選手だった母親は、祖国に絶望し、反体制派に力を貸しながら、娘をオリンピック選手に育て、「自由」になってほしいと願っている。そんな想いを受けて陸上に打ち込むアンナは、その才能をいかんなく発揮しているが、あまり主体的にこの道を選んだのではないらしい。
「不自由」に屈して体制の人形になりきり、地位や名誉を手に入れないと、「自由」は手に入れられないのだろうか。灰色にくすんだ人気のない街並みに、この国の閉塞感がただよっている。調子を取り戻したと思ったら、母親がこっそり薬物を混ぜて注入していたと知ったときのアンナの怒りと絶望たるや。