映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ポルトガルの女」感想

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ポルトガルの女、みた。EUフィルムデーズ2021にて。異国のお城でひとり、戦争に旅立った夫を待つ女。デジタル撮影で緻密に切り取られた光とモノの質感。フランドル絵画のような美しさに見惚れる。質素な生活をひたすら映す2時間16分は、物語として見ると単調で眠気を誘うが、それでも素晴らしかった。

監督のリタ・アゼヴェード・ゴメスは、2019年にイメージフォーラムで行われたポルトガル映画の特集上映でも紹介されたらしい。どの場面も、場面としての必然性よりは、視覚的な面白さを優先した構図。そして、デジタル撮影による奥行きのない映像が、より無機質な絵画的味わいを際立たせている。

黒ひげ危機一髪みたいな樽に入ってサウナ?する場面が面白い。時代考証の精度はよくわからないが、自分のイメージする中世の下級貴族の生活がリアルに描かれていると思った。画面を彩る小道具や衣装、見切れる花々に至るまで、とにかく色味がすばらしい。また、トーンを統一した照明?も良いと思った。

狼と猫のモチーフ、夫婦を隔てるカーテン、北イタリアに嫁ぐ「ポルトガルの女」への奇異の目…等々、文学的な読み取りを必要としそうな要素はたくさんあるのだけど、映像以外にあまり関心を持てないまま見てしまったせいで、そこまで深く考えることができなかった。オンライン配信より劇場向きかも?