映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「燃ゆる女の肖像」感想

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燃ゆる女の肖像、みた。前評判が高すぎる感はあるが、面白かった。結婚を嫌がるエロイーズと、正体を隠して近づく画家のマリアンヌ。燃えるような恋心と炎が重なり合う中盤のお祭りと、お別れの日が迫る中、愛を確かめ合うようにキスを交わす浜辺の場面がお気に入り。見る/見られるの反転が面白い。

なかなかにスローなお話運びのため、序盤は眠気との戦いであった(だからといってつまらない訳ではない)。フランス映画は相当コンディション良くないと途中で舟を漕ぐ体になってしまったようだ。地味に訳がいいなと思ったのは、最初から最後まで敬語でやり取りすること。この距離感が絶妙だ。

絵を描く/モデルになる、見る/見られるの関係性。そして、黄泉の国から妻を連れ帰ろうとしたオルフェウスの物語の引用。「アデル、ブルーは熱い色」のような質感だ。しかし、単純な追う/追われるの関係に落とし込むわけでもなければ、かといってドライでもない。ちょうどいい塩梅。

男性不在の物語。ゆえに、この手のテーマにありがちな葛藤や周囲の目線といった要素が描かれることはない。一方、マリアンヌが父の名を使って絵を描いたり、エロイーズが望まぬ結婚をさせられたり、といった彼女たちの境遇(ふたりを出会わせ、引き裂く原因でもある)は、まさしく男尊女卑のそれだ。

多くの人がふれるようにラストカットはとても力がある。これまで反復されてきたテーマの回収。しかし、ここでフォーカスされるのは俳優の演技であって、映像的に面白みがあるかというと微妙なところ。感想おしまい。