映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス」感想

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ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス、観た。未体験ゾーンの映画たち(配信)にて。オシャレなゴシックホラーかと思いきや途中からなかなか派手なファンタジーに飛んでいく。しかし、主演二人の落ち着いた演技と高級な背景美術が、映画を上品に仕上げていた。ストーリーは粗いがクセになる味わいだ。

家族が遺体と記念写真を撮るポスト・モーテム・フォトグラフィーは、かつて欧米で一般的な風習だったらしいですね。第一次世界大戦スペイン風邪など死が身近だった時代。「写真を撮る」という行為自体がどことなく背徳的に映る。あくまで写真家であるトーマスが主導権を握り、被写体は受け身だ。

しかし、アナに連れられて悪霊たちと対峙することで、この関係は崩れる。主導権を握るはずのトーマスが、逆に悪霊の介入を受け、振り回される側になる。この物語はトーマスが再びその主導権を握る過程と捉えてもいい。それにしてもアナの謎が謎のままなのはどうかと思ったが。伏線が投げっぱなしだ。

トーマスとアナが徐々にバディらしくなっていく。トーマスはこの村の呪いに嫌気がさして(そして村人からも促されて)一度は外に逃げるが、アナのことを想って再び村に帰ってくる。ふたりで作戦を立てて足跡を取ろうとしたり、蓄音機で声を聞こうとしたりするくだりは面白かった。

後半はがらりとジャンルが変わったかのようにパニック描写がある。ここは狙ってるのか狙ってないのか、もはやギャグなのだが。街のセットや美術がしっかりしているおかげで、なぜか下品にはならない。この塩梅が最高なのだ。それにしてもよくこういう絶妙な映画を見つけてくるなあ。オチも好き。