映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「恋はつづくよどこまでも」全話感想

f:id:StarSpangledMan:20200318215538j:image

恋はつづくよどこまでも、全話みた。佐藤健がカッコいい、上白石萌音が可愛い。それだけのことを愚直に追求してくれた。大感謝。地味にもねねんのファッションがバリエーション豊か。案外結ばれるのが早かったのが、ふたりのイチャイチャを見るのもまた楽しい。最後、もねねんリードになるのが最高。

吉川愛のサイドストーリーは薄味だったが、嫌いじゃない。堀田真由はもっと出番あると思ってたが…。もねねんは意外にもラブコメと相性がいいそのきまじめさな雰囲気故に、がんばり屋さん役が似合う。この人、動きが面白いんだよな。「君の名は。」の三葉良かったけど、やはり実写向き。

「踊ってミタ」感想

f:id:StarSpangledMan:20200317231406j:image

踊ってミタ、みた。過疎化の進む田舎町を盛り上げるために「踊ってみた」に取り組む様を描く。無気力青年の三田=岡山天音が最高。あのヘラヘラした諦め混じりの笑い方!サイドストーリーの整理も踊りの見せ方もどうかと思う密度の薄さだが、ひとが一生懸命踊ってるのを見て元気にならないはずがない!

武田玲奈がメガネをかけた地味キャラ=真鍋を演じている。これがメチャクチャ良い。なにより、彼女の目が好きだ。呆れつつも三田くんを見守る時の冷静なまなざし。練習からの帰り道、夕日を背に浴びて三田くんを見つめる寂しそうな目。そして、ステージの上で三田くんにかけられた言葉に輝く大きな瞳!

これからもっとたくさんの作品に出ると思うけど、どちらかというと映画のスクリーンで見たいかも。元アイドルの古泉を演じた加藤小夏は、この作品で初めて知ったけど、彼女もブレイクしそう(と思ってたら「スカッとジャパン」で話題になってたらしいですね)。あと踊りが上手い。

あと踊れるヤンキー役の横田真悠はモデルだけど、女優業にも進出してくるのだろうか。意外にもクソ広告マン役のゆってぃがそこそこハマってた。だけど、会話の間とか、弛緩した編集のテンポが体に合わなくてムズムズしてしまった。演出が好みじゃない。ダンスの場面も見たいところを見せてくれない。

引きたい時に寄りで、みんなが踊るステージを見渡したい時にアップでしつこく撮り続ける。なにしたいの?って思ってしまった。ライブハウスの陰気な感じより、エンディングの自然光を浴びながら踊る武田玲奈と加藤小夏の方がよっぽど美しい(なんならこの映画で一番の見どころ)なのもどうなのか…。

90分の尺で三田と真鍋の青春にフォーカスしたらもっと面白くなったんじゃない?と思ってしまった。青春群像劇として好きになれそうなところはたくさんあっただけに。あと10回ぐらい輪廻転生したら傑作になると思う。

「激突!」感想

f:id:StarSpangledMan:20200315131604j:image

激突!みた。ハイウェイで何気なく追い越したタンクローリーに粘着され続ける…。殺意を露わにする顔の見えないドライバー。その異常な執着心、どこまで逃げても付いてくる終わりのなさに震える。去年はあおり運転が話題になったし、運転経験があれば少なからず身に覚えのあるヒヤリ体験だが…怖い…。

後ろから煽られたり、危ない運転で突っ込んでくる車があったり、という嫌な経験を、車を運転したことがある人は誰もがするものだろうけど。言って仕舞えばただそれだけの話をここまで面白くサスペンスフルに描けてしまうのは、さすがスピルバーグ。編集のテンポがキレキレで全く飽きさせない。

ダイナーで疑心暗鬼になって犯人探しをしてしまったり、運転席でブツブツ呟きながら思い過ごしに違いないと自らを納得させようとする主人公。あまりに憐れだ笑 電話ボックスにトラックが突っ込んでくるところは思わず叫んでしまった。そして、戦いの末に訪れる虚脱感!すっきり終わらせてくれない。

「王国(あるいはその家について)」感想

f:id:StarSpangledMan:20200313171146j:image

「王国(あるいはその家について)」をみた。リハーサル風景を通してひとつの物語を多層的に編み出していく。物語の解体と再構築。イスに座り台本を読む演者の身体と声が、徐々に温度や湿度を帯びてくる。過去と現在、現実と虚構を行き来する中で、境界は分解され、観客をも包み込んでしまう。大傑作!

殺人を犯した女の供出調書の確認場面からはじまる冒頭。場面が切り替わり、当然その後は殺人に至るまでの経緯が描かれるのだろうと思いきや、演者は台本を手に握ってイスに座っている。目線を台本に落としたまま、テクストを読み上げる二人の女。人物と物語をつかむ鍵は〈声〉しかない。

思えば、この映画には(リハーサル風景なので当然ながら)ほとんど動きがない。動線による表現は放棄されている。台本を読み上げる演者の表情は、本人の素の状態にも、劇中人物のモードのようにも捉えられる。なによりいちばんの情報は声の厚みや振動、抑制なのだ。視覚と聴覚のギャップが凄まじい。

耳から入る情報はまさしく〈劇〉なのだが、俺の目に映るのは私服の男女が紙をめくり、カメラの前で発話する姿。著しく分離している。明らかにそのままでは受け容れ難いのだけど、同じ場面の過去と現在のリハーサル風景が何度も繰り返し出てくる中で、その多層性に気づくことになる。

単なるテキストを追い回すだけの棒読み状態(ほとんど生の情報)と、しつこく台本を身体に刷り込むうちにその人物の複雑な内面をそのまま宿らせた状態。これが過去→現在だけでなく、現在→過去の順番(つまり完成後から棒読み)でも提示されるのでややこしいのだが、この複雑さが肝になっている。

ちょっとは飲み込み始めたかな?と思ったら、振り出しに戻ってしまうわけ。物語の内側に入ったつもりでいたら、また演者の初期状態を見せられて、無理やり現実に引き戻されるのだから。でも、そういう体験を積み重ねていくと、ある時からそのカオスの中に自分が包まれていることに気づく。

演者と一緒になって物語を生み出している感覚。基本的に映画って受動的なメディアだし、時間は一直線に流れるものだけど、この映画はそうなるのを拒絶しているように見える。あなたもカメラの前で苦しみながらキャラクターを内面化してくださいと。一緒に苦労してくださいと言われているようだ。

どこまでこねくり回しても言語化は難しいのだが、ゆえにたくさん言葉を吐き出したくなる。そんな作品。映画を見たというよりは一本の現代アートを見た気持ち。心より頭が温まった。

「私の少女」感想

f:id:StarSpangledMan:20200312010351j:image

私の少女、みた。とある事情で田舎に左遷された警察官と、虐待を放置されている少女の物語。全員顔見知りの集落、逃げ場のない海、暴力に支配された男…。苦しい、ひたすら苦しい。特に拒絶された時のドヒ…胸の奥がツンと痛んだ。この村にはだれの居場所もないのかもしれない。超絶大傑作!

少女のようなあどけさなを残しながら、大人のカッコよさが溢れ出て止まらないぺ・ドゥナ姉さん、今回も最高。ペットボトルに移し替えたソジュをひとり暗い部屋で煽る所長。その孤独な佇まいに、彼女のこれまでの経験が刻まれているようだ。わざわざ説明せずとも、その酒の飲み方ですべて語ってしまう。

ドヒ=キム・セロンのつかみ所のなさもすばらしい。継父に暴行され、同級生からいじめられている時の陰鬱で近寄りがたい暗さと、所長の前でだけ見せる、弾けるような少女らしい笑顔と。どっちが本当の顔?と思うけど、そんな風にいびつにねじ曲げたのは、彼女の継父と無関心な周囲の大人たちなのだ。

重々しいテーマながら、非常にテンポは軽快で見やすい。ほとんど劇伴はないが、かといって抑制し過ぎることもない。主人公である所長の肩を持つこともなく(彼女自身、保身のために残酷な判断もしている)父権社会に切り込むバランス感覚がすばらしい。もっとこの人の作品見たいと思った。

「1500万メリット」/「ブラック・ミラー」S1-2 感想

f:id:StarSpangledMan:20200310223836j:image

ブラック・ミラー S1-2「1500万メリット」みた。娯楽と広告を五感に流し込まれ続ける管理社会。唯一の脱出方法はオーディション番組に出演することだったが…。〈消費する主体〉として生かされる世界で、人間は社会に消費されている。世界を壊そうとする衝動すら構造に取り込まれてしまう絶望。良作!

ひたすらペダルを漕ぎ続ける労働者たち。満員電車に揺られる俺となにも変わらない。くだらない娯楽で日々を消耗していく。もはや社会を維持するためのパーツとして生かされていることすら認識していない。消費社会の果てしなさ。そして、この地獄から抜け出すことはできない。

支配者の姿が見えないのが恐ろしい。すべてが構造の維持に還元されてしまう。はい上がろうとしても、その先に未来が見えない。あの青空だって本物なのか定かではないのだ。際限のない消費社会と階層の固定化。

「国歌」/「ブラック・ミラー」S1-1 感想

f:id:StarSpangledMan:20200310211040j:image

ブラック・ミラー S1-E1「国歌」大傑作!公妃誘拐犯の要求は、首相が豚とセックスする映像の全国生中継。政府はあらゆる手段を尽くそうとするが…。下劣なモノを見たいという民衆の好奇心、モラルの崩壊した報道、悪意を可視化するインターネット…。先の読めない展開に大興奮。しかし、後味はエグい。