映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「いなくなれ、群青」感想

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いなくなれ、群青、超絶大傑作。捨てられた人々が集まる階段島で再会した七草と真辺。前に進むことを拒み、閉じた世界に満足しようとする、この島の閉塞感はいまの日本の鏡だ。「他者」と出会い、本気でぶつかる時のあのヒリヒリとした感覚。夜空に彼女を見つけた瞬間、世界はもう前の形には戻らない。

横浜流星と飯豊まりえ。ニコッとした笑顔も、眉間にしわを寄せた顔も、どちらも似合う二人。写真集のようにどこを切り取っても美しい、まさに「理想郷」な階段島。しかし、ここには「外の世界」がない。「大人」もいない。監獄のような、作られたテレビスタジオみたいな空間。

主演の二人は、必ずしもナチュラルな演技をするわけでない。彼らの言葉は、文語的なセリフまわしの質感もあいまって、ゴツゴツとした、一拍挟まないとするっとは飲み込めないような固さがある。表情も柔らかくはない。でも、だからこそ、悪い夢を見ているような違和感、危うさや緊張感をはらんでいる。

飯豊まりえがすばらしかった。まっすぐで気高い少女。でも、年相応の幼さもあって。横浜流星もまだあどけさなの残る顔立ち。佐々岡さん=松岡広大や、豊川=中村里穂も、初めて見る俳優だが、とても印象に残った。これからどんどん活躍するのではないかと思う。でもやっぱり飯豊まりえだな。良すぎた。

新海誠監督が「天気の子」を「ラブストーリーではない。思春期の少年の、はじめて心通じ合う人と出会う、よろこびや感動を描いた」と語っていた。「いなくなれ、群青」も根底は同じだ。自分ではない人間と交わる。どうしても許せない、理解できない他人の存在、そして、自分が揺れ動く経験。