映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「タクシー運転手 約束は海を越えて」感想

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タクシー運転手 約束は海を越えて、観た。韓国の社会派エンタメにハズレなし!光州事件を追うドイツ人記者と、彼を乗せるタクシー運転手の物語。たった一人で未来を変える英雄なんて居ない。名もなき市民が力を合わせてこそなんですね。みんなの願いと希望をのせて走るオンボロタクシーのカッコ良さ!

希望のバトンを繋いでいく市井の人びと…という構図は「マルモイ ことばあつめ」に重なる。政治に関心を示さなかった(ある種の)「善良」な市民が、真実を知り、使命感に目覚めていく過程も同じだ。ソン・ガンホは人情味ある「ふつうのオヤジ」を演じるのがバツグンにうまい。彼の葛藤も理解できる。

主人公がケチ臭いオッサンだったからこそ、光州のみんなのため、韓国の未来のために無私の行動に走るすがたに感動する。食卓を囲う場面の温かさと、地獄と化した病院の惨さの対比。特に大通りで軍が市民に銃を向けるのは、思わず目を覆いたくなった。でも2021年の現在も同じようなことが起きている。

ドイツ人記者を演じるトーマス・クラッチマンも良かった。タクシーで座る位置が最初と最後で違うのが好き。運転席でキムの家族写真を付けてあげる心遣いもステキ。同じ使命を共有し、徐々に絆を深めていく。フィルムを守るために「選択」をせざるを得なかったあの夜から、ふたりは運命共同体だった。

緑のオンボロタクシーも、最初は頼りなかったけれど、だんだん希望の象徴に見えてくる。「Uターン」とクライマックスの激走が熱い。単なる移動手段じゃない。表情をもった「相棒」として接したくなった。史実の後日談のすれ違いは切ない。